第5話 モンスターハント
ノルトンとリアムは、黙々と罠を仕掛ける準備を進めていた。病院の廃墟の中、足元には壊れた家具や道具、金属の破片が散らばっている。どれも無駄にはできない。二人は素早く、慎重に動きながら、目の前の状況に集中していた。
「これでいけるはずだ。」ノルトンが低い声でつぶやきながら、手に取った針金をしっかりと床に張り巡らせていく。彼の目は鋭く、焦りが一切見えない。すべてが計算されていた。
リアムはその隣で、金属のパイプや壊れた道具を使って、罠のトリガーとなる部分を組み立てていた。細かな調整を繰り返しながら、どこにどう動くかを考えながら手を動かしている。
「これで…足元がかかる。」ノルトンがつぶやくと、リアムも頷きながら最後の調整を行う。罠の中心部分には細い糸が張られ、その先に繋がったトリガーがナースを待っている。
「ナースが足を踏み入れた瞬間、これが引っかかる。動きが止まったらすぐに隠れて、近づいて一気に仕留める。」ノルトンが静かに説明する。
リアムはその言葉に頷き、再度あたりを確認した。全ての準備が整い、これで一歩間違えれば命取りだという状況が、二人を更に緊張させた。
「これで大丈夫だろう。」リアムが最後の確認をし、針金を引っ張ってテストした。「一度引っかかれば、逃げられない。」
ノルトンは満足そうに頷く。「あとは、ナースがここに来るのを待つだけだ。」
二人はその場に静かに身を潜め、罠が仕掛けられた床を注意深く見つめた。今は、何もかもが終わるその瞬間を待つだけとなった。
罠を仕掛け、ナースを嵌める準備が整った。ノルト
ンは緊張した面持ちで周囲を見渡し、リアムもまたその間にひと息つくように立っていた。
「隠れろ、すぐに来る。」ノルトンが低く言う。二人はそれぞれ影に身を潜め、息を殺す。
そのとき、足音が聞こえた。あの異常なナースの速さに、心臓が激しく鼓動を打つ。廊下を歩く音が近づくたびに、二人の緊張は高まるばかりだった。リアムは手に握った鋭利な金属片をじっと見つめ、もう一度心を落ち着けようと深呼吸する。
ナースの姿が見えた瞬間、ノルトンはすぐさま罠を発動させた。鋭い鉄のバネがナースをしっかりと捕らえ、その身動きが取れなくなる。しかし、ナースの異常な力により、罠がすぐに破られる。ナースはその強靭な爪で罠の一部を引き裂き、リアムとノルトンに向かって凄まじい速度で突進してきた。
「リアム!」ノルトンが叫び、すぐにリアムを守ろうと駆け寄る。しかし、ナースの爪がリアムの肩を掠め、鋭く切り裂く。その衝撃でリアムは背を仰け反らせ、激痛が全身を駆け巡る。
「クッ…!」リアムは血が流れる傷口を抑えながら、痛みに耐えようとする。しかし、痛みは容赦なく彼の体を支配し、顔面に冷や汗が浮かんだ。
「逃げろ、リアム!」ノルトンが必死に叫ぶが、リアムの体は動かず、足元がふらつく。「くそっ、動け!」
ナースはその恐ろしい爪をリアムの腹部に向けて突き刺し、身をよじって引き抜こうとする。ノルトンはその光景を目の当たりにし、怒りと恐怖が入り混じった感情が心を支配する。
「やめろ!」ノルトンは隙をついて、近くにあった鉄棒を手に取り、ナースに向かって全力で突進する。その力任せにナースの肩を打ち、ナースは一瞬だけ動きが止まった。
その間に、リアムは自ら体を引き離すが、その体力は限界に達していた。ナースに切り裂かれた肩から血が止まらず、意識が遠のきかけている。
ノルトンはさらに鉄棒でナースを攻撃し続け、その隙に罠を再度作動させ、ナースを一気に仕留める。ナースが倒れると、ようやくリアムを引き寄せてその傷を必死に押さえる。
「リアム、大丈夫か…?」ノルトンの声が震える。
リアムはふらつきながらもかろうじて笑う。「ノルトン…助かった…でも…」
リアムの体は、すでに出血多量で意識が薄れていっていた。ノルトンは彼を支えながら、今すぐにでもここを離れるべきだと感じていた。しかし、リアムの傷の深さに彼の顔から血の気が引く。
「お前、絶対に死なせないからな!」ノルトンは必死で傷口を押さえながら、リアムを支え続ける。
だが、リアムの目は次第にかすんでいき、その体はもう耐えられないほどに重くなっていった。
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