第2話 職業病
リアムは立て籠もった部屋の中で、震える手を無意識にぎゅっと握りしめた。目の前のドアの向こうから、異常な音や人々の呻き声が響き渡る。しかし、彼は深呼吸をして冷静さを取り戻そうとした。
「まず、落ち着け…」彼は心の中で繰り返し、自分を励ますように言い聞かせた。「こんな状況でも、冷静でいることが大事だ。」
頭の中を整理する。リアムは、目の前で起こった事態の記憶を必死に思い起こす。病院で何が起こったのか、なぜこんなことが起こっているのか。その答えを求めて、彼は自分の考えを整理した。
「確か…昨日までは何もおかしなことはなかったはずだ。」無意識に額を押さえながら、記憶を辿る。昨日までは、病院内は普段通りで、何の異常も感じなかった。ただ、突然、異変が襲ってきた。それが何だったのか、リアムには分からない。あの看護師の狂気のような目つき、病室を襲う異常をきたした患者たち、そして彼の目の前で起こった恐ろしい出来事。すべてが突如として起こり、その理由が分からなかった。
「一体、何が起こったんだ…?」リアムは静かに呟き、頭の中で混乱する思考を整理しようとした。病院で起きた出来事が、ただの病気や事故ではないことだけは感じ取っていたが、その原因や状況は全く分からなかった。
リアムは自分の体を確認したが、異常は感じなかった。しかし、この静けさと恐怖の中で、彼は急激に自分の身の安全を確保しなければならないという強い危機感を覚えた。
「まずは、この病棟を出る方法を探さないと…」彼は決心し、部屋の中を見回して周囲の状況を把握した。窓は固く閉まっており、他の出口も塞がれている。しかし、部屋の中にはまだ使えそうな医療機器が散乱しており、何か手がかりになるものがあるかもしれない。
冷静に思考を進めながら、リアムは今後の行動を考えた。彼は一つ確信していた。今、目の前にある問題に立ち向かうためには、まず何が起こったのかを理解し、その上で自分の選択肢を模索しなければならないということだ。
「とにかく、辺りを調べなきゃ始まらない。」リアムは意を決してドアを開け、病室から出て辺りを散策し始めた。少し歩いた後、長い間、トイレに行っていなかったのが原因かリアムは急な尿意に襲われた。リアムは少し小走りになりながらも周辺を探索し、遂にはトイレを見つけ、危機一髪で事を終えた。リアムはほっとため息をつき、物をしまい終えると、ふと顔を上げた。彼は悪い笑みを浮かべながら、少し間を置いてからこう言った。
「その手があったか…」と。
ーーー
リアムが見上げた先にあったのは一つの通気口だった。
リアムは一瞬、何をすべきか考えたが、リアムは設計士である為、直ぐ様にこの通気口を解体し、侵入しようと画策した。しかし、通気口を解体するにも道具がない。そんな時、リアムは病室に自分が工具を持ち歩いていることを思い出し、ポケットからドライバーを取り出した。そこからは早かった。
便器を踏み台にしつつ、通気口のねじにドライバーを食い込ませる。ねじは少し硬めに締められていたが、設計士であるこの男にとってはそんなことは関係ない。ねじは、多少なりとも抵抗するも、するりといとも容易くに回され、自らのあるべき場所から外れてしまう。そんな作業が何回か行われた後、遂に通気口の蓋が外れ、中への入り口が開かれる。リアムはニヤッとやらしい笑みを浮かべながら「計画通り。」と言い、通気口の内部へと這い上がり、音を立てないようにそっと匍匐前進しながら通気口内を進んでいった。
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