友人の結婚式

結婚式



それから、毎日は変わらず慌ただしくて、ダイからも時々くだらないメッセージが入る位だった。


秋になると子供達の運動会、発表会と準備と企画に追われて慌ただしく過ぎていく。



***



そして、ユミの結婚式はあっという間にやってきた。


冬の冷たい空気が肌を差して、昼過ぎだというのに白い息が吐き出される。

パーティー用のドレスだから余計と寒さを感じるのだろう。



「アリカ、久しぶりー!」


「きゃー、元気だった?」


県外で結婚した地元の友達と久しぶりの再開は、いくつになっても高い声が響き渡って懐かしい気分になる。


車で20分程の結婚式場は数年前に建てられたとこで、真っ白な外壁に教会の横にたつ可愛らしいチャペルが印象的なもの。



「式はこっちだってー」


「今、何やってんの?」


「子供は何歳になるんだっけー?」


なかなか会えないものだから、話題は尽きなくてわいわい騒ぎながら大きな扉の向こうへ足を踏み入れた。


教会の中には大きなステンドガラスとパイプオルガン、それに教壇の前には牧師さんが既に立っている。

ユミが結婚してしまう事に急に現実味が増して、胸がしんみりしてきて思わず足元に視線を落とした。


顔を上げれば、新婦側の前の方にユミのお母さんとその隣にダイが座っている姿が見えた。

新郎が入ってくると、何故か笑い声が上がって、新郎側の人達がからかう様に声を出したりしていたのに。



「新婦、入場」


そう牧師さんが口をつ開けば、教会の中が一気に静まりかえる。


オルガンの音が鳴り出したのと同時に後ろの扉が開いて、真っ白なドレスを身に纏うユミの姿が目に入った。


表情はベールに隠されてよく見えない。


おじさんの腕に自分の腕を絡めて、ユミはゆっくりと1歩ずつ足を進める。

途中で、おじさんから離れて新郎の腕を取って歩きして背中を見せた。



"アリカちゃーん!!一緒に遊ぼう"


なんて私の名前を呼ぶ小さな女の子の姿を、ついこの間の事のように思い出せるのに。

私の目の前には背筋をピンと伸ばして歩く大人になってしまった女の子がいる。


今までユミと一緒に過ごしてきた中で、今日がこの瞬間が1番綺麗だと思った──。



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