あの頃の夢
「ねぇ、絵本作ったの!読んであげる!」
差し出したのは、自分で作った手作りの絵本。
ユミの家に遊びにきて、ユミがピアノに行った時の30分を見計らって鞄から取り出した。
「えー?アリカちゃんがかいたの?」
ユミに内緒にしたかったのは、その絵本が凄く不恰好で未完成だったから。
「ユミには内緒ね!2人の秘密」
「うん?分かったー!」
それと、まだ描いているのが恥ずかしかったからだったと思う。
「ね、どうだった?」
「よ、よく分からない」
「えー!!なんで?」
結局、この位の年齢の子に"内緒"と約束させたところで、すぐユミに話されちゃったんだけどね。
駐車場について車に乗り込んだところで、ふと ユミにスピーチをたのまれていた事を思い出す。
「あー、やりたくない……」
でも、めでたい事柄なだけに引き受けるしかないんだと、諦めの息が漏れる。
スピーチの本でも買っておこうと思って、エンジンをふかしてそのまま近くの本屋に車を向けた。
冠婚葬祭──、と。
店内にずらりと並ぶ"結婚式のスピーチ"の本の数が想像していたより多くて少し圧倒される。
泣けるスピーチ、笑いを取るスピーチと分かれているものもあるけれど。
普通でいいのよ、普通のスピーチで。なんて何冊か中身を軽く見て、悩みながらも参考なりそうなものを1冊手に取った。
そのまま、レジに向かおうとした時に視界に入ったのは、この間 三好ちゃんが話していた絵本の雑誌だった。
三好ちゃんの話によると、絵を描くのが得意な友達が毎月買っているみたいで大人向けの内容らしい。
スピーチの本を腕で挟みながら、その雑誌をパラパラとめくってみれば。
有名なキャラクターの情報や可愛らしいイラストに優しい文章が添えられたもの、絵本の紹介コーナーとかが掲載されていた。
後ろの方のページには、コンテスト募集なんてものがのっている。
ふーん、ネットで出来るんだ…。
ま、買うだけなら。
そう思って、その雑誌も手にして再びレジへと足を向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます