考えるコト

サクラちゃんといつきくん


「サークーラーのー!」


「だってー、僕のが早かったのにー!!」


「やめてよ!いっくん!いーたーいー!!!」


なんて騒ぎ声が頭に響いてガンガンとする。

保育室でのは子供逹の大きな声が飛び交っていた。



「はい、はい!ストーップ!」


男の子が女の子の髪の毛を引っ張りはじめたので、流石に2人の間にと仲裁に入る。



「サクラちゃん、いっくんどうしたの?」


しゃがみ込んで小さな2人に視線を合わせた。



「いっくんが髪の毛引っ張ったのー!」


「だ、だって、サクちゃんが……」


「どんッて押してきたの!」


「違うよ、サクちゃんが……」


まだ上手く言葉に表せない"いつきくん"に、気の強い"サクラちゃん"。


この2人の事だから、きっとサクラちゃんが話をしたところ伝わらなくていつきくんが手を出しちゃったんだろうな。


でも、いつだったっけな──。

いつきくんが苦手なハーモニカをサクラちゃんが教えてあげていた事があった。


それにこの間なんか、サクラちゃんが転んで泣いた時、真っ先に知らせにきたのがいつきくんだった。


いつも喧嘩している2人だけど、本当は仲が良いのも私はよく知っている。



「先生、2人が喧嘩すると悲しいなぁ」


なんて眉を下げて笑ってみたところで、"だって"なんて言い合いは続けられる。



「ねぇ、先生は最初から見てなかったから分からないけど。サクラちゃん。いつきくんはね、意地悪で髪の毛を引っ張った訳じゃないんだよ?」


私の言葉に、目をパチパチとさせるサクラちゃん。



「いつきくんも。この玩具、貸したくなかった訳じゃないんでしょ?もうちょっと遊んでたかったのかな?」


目の前のいつきくんは、下を向いたままより深く頷くから表情は見えないけれど。



「いつきくんもサクラちゃんも、仲良く一緒に遊びたかったんじゃないのかな?」


そう言って、小さな2人の頭に手を撫で下ろした。


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