嘘は言ってないぞ


「先週、アリカがでろでろに酔っ払っちゃったとき?」


「……そんな酷かった?」


「手のつけどころも無かった!!」


なんてユミがきっぱりと言い切るから、自分が情けなくなってきた。



「ま、まぁ。よく覚えてないんだけど!ダイにお世話になったからご飯奢ったの」


「えー、そうだったの?」


「その時そういう話になって」


「ダイも図々しい奴だなー」


「あー、まぁ昔話で盛り上がっちゃってさ!」


うん、嘘は言っていないぞ。



「ふーん」


なんて向けられたユミの視線は一瞬痛い気がした。

けど、その視線はすぐにユミ自身の手元の絵本へ目が向けられたから気のせいだと信じたい。


ユミが"絵本の読み聞かせって胎教にいいんだー"なんて柔らかな笑顔を見せるから、ダイとの関係を内緒にしていることに胸が少し痛んだ。


視線を落とせば、まだ膨らみのないお腹が目に入る。



「あの……さ、」


「お願いが……」


ユミに視線を戻してから再び唇を開くと、私とユミの台詞が丁度重なった。



「あ……」


「何?」


「ユミ先いーよ?」


「そう?じゃぁさ、お願いがあるんだけどね」


「うん」


「結婚式をね、12月に予定してるの」


「えー!!」


「来てくれる?」


「何言ってんの?当たり前じゃん!!」


"行く行く絶対に行く!"なんて台詞を続けて叫んだところで、



「でさ、早いんだけどアリカに友人スピーチ頼もうと思って」


「……え?」


凄く断りたいけど断れない役割を頼まれる事となる。



「アリカに友人スピーチを」


「はぁ??」


「よろしくね!」


「ええええぇ?」


「で、アリカの話って」


「い、今のでふっとんだ!」


「ごめん、ごめん」


ユミは、あははーなんて全く悪気のみられない笑い声をあげた。


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