ウェンディーに恋をして*

小学生のキミ

俺、アリカが好きだ


「アリカ、やったねー!」


「ユミも受かって良かったよー!!」


東京の大学が決まって、ユミと2人で大泣きした事は昨日の出来事のように思い出せた。

多分、その日に私が地元を出る話がダイに伝わったんだと思う。



「アリカ、東京行くのか?」


大学の合格発表の次の日だった。

ランドセルを背負っていたから、多分小学校の帰り──。



「俺、アリカが好きだ!!」


生意気だけど弟のように可愛いダイからの告白は、もちろん冗談にしか聞こえなかった。



「うん、寂しくなるね」


そう言って頭を撫で下ろせば、



「ちげーよ!バーカ!!」


なんてダイの言葉と共に私の右手は振り払われた。



「え……?」


「……」


「あ、無理」


目の前で気恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている小さなダイを見て、本当の恋か分からない様なダイの小さな想いに気が付いた。


だけど、私にとってダイという存在は年の離れた弟みたいな奴だから。

何よりランドセルも背負ってる年齢だし、それ以上の特別な感情なんてもちろんなかった。


その後は気まずくなった。というより、私は全然気にすることなくすぐに引っ越しちゃったし。

私が東京の大学を卒業して数年働いてから地元に戻ってきたら、ダイも今の大学に行く事になって、まるですれ違いのように顔を合わせなかった。


もしかしたら、ダイの方が私を避けていたのかもしれない。



「わー!ありがとう!!」


先週、ダイと一緒に買った絵本のプレゼントをユミに渡せば、ユミは目をまるで自分が子供の様に目を輝かせて喜んでくれた。


話によると、ユミはもうすぐ妊娠3ヶ月になるみたいで、発覚したばかりなのにユミの部屋にはマタニティの本が既に何冊か置かれている。



「ヨシヤさんが……」


なんて、"小林さん"の下の名前を目を細めて口にするユミは幸せいっぱいそのもの。


いざ、ユミを目の前にすると言うべきか言わないか……。決心が揺らいでいく。



「えー、ダイと買いに行ったの?」


「う、うん」


あなたの弟とヤッてしまいたした、と言うべきか言わないべきか。



「ダイと仲良かったっけー?」


「え、あーうん。車で送って貰ったじゃん?」


や、別に関係を持った男の人の話を全てユミに話てるわけじゃないんだけどね。







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