母親になる心の準備
「もー、バカバカ!ダイのせいで恥かいたじゃん!」
「どっちのせいだよ!」
「ダイが文句言うからでしょー」
「文句じゃねーよ!意見だろ?」
「はぁ?」
「お前、社会人のくせにそんな区別もつかねぇの?」
「年上バカにして、えっらそーに!」
そう言い合って、ダイが私にチラリと視線を向けて口元を緩ませてから再び口を開いた。
「……あの禿げた店員めっちゃ見てたぜ」
「た、確かにカツラだったかもっ……」
なんて続けられた台詞に、"プッ"と吹き出してしまう。
「そもそも最初から赤ちゃん売り場に行ったのが間違いだったんだよなー」
「あんたがエレベーターで3階押したんじゃない」
「ちっげーよ、俺は……」
「なによー」
なんて言い合いながらも、笑い合って足を並んべる。
ベビー用品売り場から出たところは丁度本屋で、子供用の絵本が沢山並んでいるのが視界に入った。
「あ、ねぇねぇ。絵本なんてどうかな?」
「……結局、子供になのかよ」
「ほら、性別問わないしさ」
棚には絵本が表紙が見えるように並べられている。
簡単そうなイラストばかりなのに、色鮮やかで魅力的で可愛らしくて、目を引くものだらけだった。
「産まれてもねぇのに……」
隣でダイがぶつぶつと文句言ってるのなんて気にならない位に、見ているだけでこっちまで幸せになるような可愛らしい絵柄が視界に入る。
「それに、胎教に読み聞かてもいいって書いてあるし!」
ダイの台詞を遮るようにそう言葉を続けて1冊の絵本を手に取れば、
「へぇー。あ、本当だ」
意外にも覗き込んできた。
「"お腹にいる時から赤ちゃんに読み聞かせます"って、ほら帯に書いてあるし」
「ふーん」
「お母さんの心も穏やかになって不安定になりやすい妊婦さんにもいいんだって」
「あー、いいかもな」
「本当に?」
「あぁ。あいつの場合さ」
「ん?」
「ほら、結婚も急だし。母親になる心の準備にもなるだろうしな」
「でしょ、でしょ!!」
ダイが私の意見にはじめて共感してくれたのが、今まで否定されていた分嬉しく感じる。
「プレゼント用にして下さい!!」
結局、当店ランキングBEST1位から5位までの5冊をユミの為に購入する事になった。
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