子供の頃に
1口ちょうだい
「良かったね!いいの選べて」
本屋を出て再びダイとショッピングモール内を歩き出した。
「結局、結婚祝いじゃなくなったけどな」
ユミのプレゼントも買えて、せっかく気分がいいのに。この男はいつまで引きずってるのか。
「まだそれ言ってんの?細かい男はウザがられるし」
「ほっとけよ」
「あー、もー。なんか甘いの食べたーい」
「そういえば、朝食ってねぇもんな」
「うーん、そんなお腹は減って無いんだけどな……」
「俺は食わなくても平気だけど」
「ちゃんと朝ご飯食べないとロクな大人になれませんけど?」
「それははじめて聞いたな……」
「あ、アイス食べない?」
ふと視界に入ったのはアイスクリームショップ屋さんで、行列の出来る位の人気で美味しいお店。
このショッピングモールに来る度に、つい買って食べてしまう。
「ちゃんとした朝ご飯食うんじゃねーの?」
「お腹減ってないって言ったじゃん」
「……」
結局、ダイは食べないっていうから2人で行列に並んだのに、買ったの私だけ。アイスを片手に、そのままショッピングモールの外に出て1番近くのベンチにと腰掛けた。
お店の中の涼しさと反対に、夏の陽射しが容赦なく私逹を照りつける。
「美味しい!やっぱりこれだよねー」
ワッフルコーンにはダブルで乗せられたミルク味とマカダミアナッツの入ったチョコ味の2種類。
口にすればふんわりとした甘い味が口の中に広がって、"お店の中で食べれば良かった!"なんて思いは一気に吹き飛んでしまう。
「ダイも買えば良かったのに。アイスくらい奢ってあげるし」
そう言ってアイスに口を付ければ、再び甘い味が私の口の中に広がった。
「別に金が無かった訳じゃねぇよ」
「ふーん。美味しいのに」
「そんな美味いの?」
「うん!アイス屋さんで1番好きなの!」
「そこまで言うなら、1口ちょうだい」
「え……?」
ダイが私のアイスを持つ手を外側から握って、自分の口元へとアイスを運んでいく。
「ちょっ、待ってよ」
隣に座るダイの顔があまりにも近いから、びっくりした。
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