第11話

泣いてしまったせいでせっかく整えてもらったメイクが少し崩れてしまったけど、エリオットがまたエリステラさんのお店に寄ってくれた。

そういえば来たときに着ていた服はお店に置きっぱなしだ。なんか色々と申し訳ない。

お店に入ってすぐに私の顔のせいかエリオットがエリステラさんに怒られていた。

私はすぐに奥の部屋で元々着ていた服に着替えさせてもらってメイクも軽く直してもらった。

ドレスはエリステラさんのお店で預かってくれるとのことで、とてもありがたい。

私が持って帰ってしまうとすぐに駄目にしてしまう可能性が高い…………。

最初はエリオットが持って帰ると言っていたけどエリステラさんに即却下されていた。

この2人はなんだかきょうだいみたいだなぁと思っていたら本当にそうだというからびっくりした。といっても義理でエリステラさんの旦那さんがエリオットのお兄さんなんだそうだ。

すごく仲が良さそうで羨ましい。

私はずっと一人っ子だからな〜。

「2人が結婚したら私はララのお義姉様になれるってことじゃない嬉し〜!」

「ちょっ、義姉さん!」

エリステラさんの言葉にまたエリオットが顔を赤くして慌てる。

「もう……………僕は彼女を送っていくからじゃあね」

エリオットはぶっきらぼうに言う。

「はいはい。ララ、またね」

「はい、今日はありがとうございました」

見送ってくれるエリステラさんにお辞儀をするとエリステラさんが感動したような様子を見せるので不思議に思っているとエリオットの肩をがっしりと掴んで早口で喋り始めた。

「エリーこの子は絶対幸せにしなきゃだめよ絶対よこんな良い子あんたには勿体無いぐらいなんだからほんとに泣かせんじゃないわよ!」

「分かった、分かったって義姉さん!!」

エリステラさんはエリオットの返事を聞くと疑いの目を向けつつも彼の肩から手を離した。

「じゃあ、本当に気をつけて」

「ありがとうございます」

エリオットのエスコートを受けて馬車に乗り込む。窓からエリステラさんが見えなくなるまで手を振った。

「君も義姉さんもお互いに気に入ったみたいでなによりだよ」

エリオットは若干呆れつつも笑って言う。

「うん、すごく優しくて良い人だった」

「優しいかなぁ……」

エリオットは私の言葉に首を傾げる。

彼にとってはあまり優しく映らないのかな。

エリステラさんのお店から街まではそこまで離れていないし街から私の家までもそこまで遠くはない。でも流石に家までは歩かないといけないから、それはちょっと気が引ける。

街の門まで来たところで止めてもらおうと思ったらちょうどそこで馬車が止まった。

「行こうか、フィーリィ」

「え……」

エリオットが当たり前のように手を差し出してくるのでとりあえず馬車から降りる。

「えっと、ここまでで大丈夫だよ?」

「いや、家まで送るよ。そろそろ日も落ちてきたから心配だし」

そう言われると断れない。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

そうして結局家の目の前まで送ってもらった。

「今日は、ありがとう」

最初は何事かと思ったけどとても楽しかった。

それに、自分の気持ちも整理がついた。

知らなかったこともたくさん知れた。

とても足りないけど今は言葉で感謝を伝える。

「こちらこそ、ありがとう」

彼は綺麗に笑って言った。

やっぱりこの笑顔が私は好きだ。

「今度こそ迎えに来るって約束するから」

エリオットは右手の小指を差し出してくる。

「うん、待ってる」

私は自分の右手小指を絡めて言った。

あの時と同じ約束。

でも、今度は絶対に彼はこの約束を守ってくれるだろう。

私はそう、信じている。

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