第7話

――なのに、あと一歩が間に合わず出入口に見えた姿に驚いて、近くのテーブルの影に体を滑り込ませた。



「疲れた〜!休もうぜ〜」


「あ、小田原さん。お疲れさまです」


「あぁ!ashのみなさん、お疲れさまですっ」



……あ、っぶなかったぁ〜。


危うく鉢合わせるとこだった。



打ち合わせが終わったのか、休憩なのか、ashの4人が1階のカフェスペースに降りてきていた。



「小田原さん休憩っすか〜?」


愛嬌のある笑顔でドラムのモモタが菫さんの座る席に近づいていく。



「そうです、みなさんもですか?」


「俺らは打ち合わせ終わって、これから練習です」


「その前にちょっと息抜きするんですよ、RUIくんが使い物になんねえから」


ちょっとぶっきらぼうな言い方の万里ばんりが後ろを歩くRUIを振り返る。


「ん〜、カフェイン切れて頭働かない〜」


相変わらずダルそうにRUIが喋りながら、菫さんの横を通りすぎようとしてなぜか足を止めた。



「RUI?どうかしたか?」


神奈が足を止めたRUIを不思議そうに見る。



「……ねえ、誰と一緒だったの?」



RUIの突然の質問に、まさか自分が話しかけられるとは思っていなかったみたいで、菫さんがうろたえながら目を瞬いた。



「えっ!る、RUIさんが私に話しかけて……っ」


「えぇ〜、るーくんが自分から話かけたぁ〜!」


「は?RUI、どうした?」


「……」



RUI以外の4人があまりの珍しさに驚いているけど、当の本人はどうでもよさそうにもう一度同じことを繰り返した。



「ねえ、誰?」



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