第12話

………変わったなぁ。




とっくのとうに意識を失い、いまだに目を覚まさないお姫様を見て思う。




以前の彼女・・・・・なら、この程度の打撃、痛くもかゆくもなかっただろうに。




今では俺の暴力、罵倒、歪んだ性癖、怒り、悲しみ……それらを全部ぶつけただけでこれだ。




……まあ、コップに入れた媚薬の所為でもあるんだろうけど。




彼女は意識を失ってもなお、涙を溢れさせ続けていた。




この涙は恐怖からだろうか。それとも、俺への謝罪の表れなのだろうか。




いずれにせよ、お母さんと俺の心にぽっかり空いた大きな穴は返ってこない。




………こんなことを考えるなんてらしくない。きっと疲れているんだ。寝よう。




俺はお湯を沸かして紅茶を入れ、白い物体をその中に入れる。




フルニトラゼパム。お母さんが自殺に用いた睡眠薬の一種だ。




皮肉の様だけど、今の俺はこの薬がないと安眠することができない。




フーッと深呼吸をして紅茶を一気に飲み干すと、俺はお姫様の隣に横わたってブランケットを被った。




時間がたつにつれ、朦朧としてくる意識の中で考える。




俺は別に、彼女を嫌っている訳ではない。




ただ、女の人の愛しかたが他とちがっているだけ。




俺が起きたら彼女はどうなっているのだろうか。とりあえずご飯はちゃんと食べさせてあげよう。




……過去のこと、ずるずる引きずるめんどくさい男でごめん。




愛してるよ、りこちゃん。

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