第11話
はじまりは、同級生の女の子からの告白だった。
その女の子は、俺が通ってた中学校の中で誰よりも可愛く、温厚な性格で、誰からも慕われていた。
そんな女の子がなんで俺なんかに……と思ったが、彼女いわく、俺の「優しい」ところが好きらしい。
なんだ?その俺じゃ無くても良かったんじゃね感。
そんなことを思ったけど、特に断る理由がないので、その場でOKをした。
次の日、俺は教室に入る……ことができなかった。
具体的に説明すると、教室に入る前にそれを阻止された。
……3年の男子たちに。1年の俺が。
何かおかしいと思い助けを求めようとしたけれど、まわりからは目をそらされるだけだった。
昼休憩校舎裏に来い、という漫画のような宣告をされ、俺は言われたとおり校舎裏に行った。
結果から言うと、俺は見るにも耐えない姿になってしまった。
どうやら3年の男子のうちのひとりが、俺に告白した女の子にフラれたらしい。
しかも一昨日の話。
つまりその女の子は、彼の告白を断り、俺に告白した…ということだ。
………俺にそこまでの価値があったのかはさておき。
てな訳で、俺は3年の男子たちにボッコボコにされた。
………いや、マジで起きるんじゃん。漫画みたいなことって。
失恋した男子は、あろうことか俺を殴っている最中、泣いていた。
……いや、泣きたいのはこっちだよ。そう思ったが、あの時の俺は彼に同情したのか、不思議と落ち着いていた。
それからというもの、俺はだんだんと「いじめ」のターゲットになっていった。
失恋した男子が腹いせに流したデタラメのせいで、俺は完全に孤立した。
俺に告白した女の子は、不登校になった。
俺のことを心の底から恨んでいる人はそう多くはいないはずなのに、たくさんの人にいじめられた。
多分、みんながみんな「ノリの悪い奴」というレッテルを貼られたくなくて必死だったのだろう。
殴られ、蹴られ、物を隠され、捨てられ………はじめのうちは無になってそれを受け入れてきたけど、それもやがて出来なくなった。
デタラメな噂のせいで、2年のクレイジーな女たちに目をつけられたからだ。
さき、そら、まい、りこ、ゆき……全員の名前は覚えていないけれど、女だと言ってあなどるなかれ。そこらへんの子羊ちゃんとは訳が違う。
そこからは早かった。
彼女たちはいたずらに、けれども容赦なく、俺の身体と精神を蝕んでいった。
そんなある日、お母さんが死んだ。
死因は、大量服薬。睡眠薬を用いたそうだ。
俺が傷を付けて帰ってくる度に、「守ってやれなくてごめんね。」と言ってくれたお母さん。
確証はないけれど、もともと鬱病など、多くの精神疾患を患っていたお母さんは、俺のいじめに耐えきれなかったのだろう。
なにがどうであれ、俺のいじめはお母さんの服毒を扇ぎ立てたに違いない。
俺は久しぶりに声を上げて泣いた。
たまたま取り調べに来ていた警察官が、俺の身体中にあるあざや傷に気付き、警察病院に連れていかれた。
身体と心の治療が必要なため、長期にわたって入院することになったけれど、そんなことどうでも良かった。
お母さんを失った俺は、これからどうやって生きていけばいいんだろう……
俺は症状が酷く、病院から出ることができなかった。当然、俺をいじめていた奴らが病院に来ることができない。
こうして、色々なものを失った俺のいじめは終わりをとげた。
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