第5話

先輩がカルーアミルクを飲み干してから15分が経過した。






案の定、というか計算通り、先輩は俺の横でぐっすり眠っている。






「先輩、寝ちゃったね~」




「…お前が強制的に寝かせたんだろーが」






頬杖をついてお兄さん・・・・に話しかけると、紳士的なバーテンダーにあるまじき言葉遣いでツッコまれた。






「先輩、お酒弱いって言ってたもんね~」




「…じゃあカルーアミルクなんて度数高い酒飲ませんなよ」




「お兄さんは俺の意図に気付いた上でこのお酒出したんでしょ~?それって同罪なんじゃない??」




「……安定のクズだな」




「ねぇ、さっきから言葉遣い悪くな~い?……お前一応バーテンダーだろ?」




「おっと春くん?地声と素が出ちゃってますよ??」




「んー?なんのことかなぁ?」




「……このロールキャベツ野郎が。」




「え?それお兄さんが言っちゃうの??」




「……あーお前マジだりーわ。別に何でも良いけど、酒弱い女に度数高いの飲ませんのだけはやめとけ。」




「……確かにカルーアミルクはマズかったか。そのセリフ、バーテンダーが言うと重みが違うね~。」




「当たり前。下手したら救急車だからな。」




「……次からは睡眠薬にしよっかな~」




「……それは下手したらパトカーだからな。」




「え、もう10回は使ってるんだけど。」




「……お前の犠牲になった女の敵、今とるわ。ほれ、ウチで一番度数高い酒。」




「えー!!これ、お兄さんのおごり??じゃ、遠慮なく。」






そう言うと、俺は唖然としているお兄さんにウインクし、






「……は?お前…」






……一気に飲み干した。






「……死にたいのか?」




「俺はなんと、世にも珍しい底無し沼・・・・でーす!!……あれ、言ってなかったっけ?」




「……お前女の怨霊とかに悩まされてねぇか?」




「えっち中のあうあうの音量・・には悩まされているかなぁ。……声デカすぎるとマジで萎えるんだよな~」




「怨霊の意味ちげーよ。マジでお前、そーいうとこだわ。」




「女の子好きだからいーの。じゃあ、俺そろそろ帰るわ。先輩爆睡してるからタクシー捕まえてくる」




「……おう、また来いよ。」




「言われなくてもそうする。あ、りょう兄手出して。」




「俺はお前の兄貴じゃないけどな。……何だよこれ、薬?」




「彼女ちゃんに使ってみな」




「……お前の例のポーチ・・・・・に入ってたやつだろ??」




「え、そーだけど?」




「俺の彼女死ぬのか?」




「もう!なわけないじゃ~ん!……ちょっとトんじゃうかもしれないけど。」




「……ほんとえげつねーな、お前。」




「……それはお前もだろ?そんなこと言ってどーせこれ使うんだろ??」




「……。」




「……あ、これは使うな。」




「……うっせぇ。」




「はいはい。じゃあそろそろ帰るね!バイバイお兄さん!」

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