第33話 動力
「そうだ、奴にかかわってる場合じゃないんだよ。ブライアン、動力のことなんだが。」
「ああ、それな。キャサリンにいろいろ教えてもらったんだがな、キャサリンの前世では主に石油という液体状の化石を燃料として使っていたんだそうだ。それと、石炭という、固体の化石を燃料としていたそうだ。だが、どちらも燃やすと星の空気を汚してしまい、また、星全体の温度に作用したり、空気が汚れることによって人間だけでなく動物植物も病気になったりして、使うのが問題になってきていたそうだ。そんな時、海はこの星と同様塩分があってな、その海の塩分から燃料を作り出すということが研究されていて、実用化も近かったそうだ。実用化する前にキャサリンは転生したので、そのあとのことはわからないそうだが。それで、そこからは俺の研究になるのだが、海水から塩を取りだし、それをゼレさんの呪文と俺の魔法で燃料化し、さらに土魔法で固めればできるのだ。・・・と、実はこれはまだ理論上のことで、実験してみないといけないのだが。」
「はあー、ブライアン、おまえって凄いな。」
「ブライアン、なんでそんなに頭いいのさ。」
「ブライアン様って本当に、天才なのですね。」
皆が感心している。キャサリンはもう、目がハートの形になって、うっとりとブライアンを見ている。
「まだ理論だけだと言ったろう。どこかに理論の穴があるかもしれん。実験しないことには、何とも言えん。」
「えー、それじゃ早く実験しようよ。」
「今夜はもう一度見直して、明日の朝から実験しようと思う。付き合うか?」
「「「もちろん!」」」
翌日、ブライアン、ゼレ、ラルフ、アレックス、キャサリンが実験室に集まった。
海水から塩を取り、それをブライアンが魔法をかけると、塩が光る。それにゼレが呪文を唱えると、さらに光る。それをブライアンが魔法で固めた。
「さて、これを、ここにつないでみる。」
ブライアンがそれを扇風機につないだ。
「「「わぁ!」」」
扇風機が回った。
「成功だ!ブライアン、ゼレさん、凄いぞ!」
「俺、ちょっとブラッドレー様とウッドフェルド様を呼んでくる。」
アレックスが部屋を飛び出していった。
しばらくして、ブラッドレーとウッドフェルドが実験室にやってきて、アレックスが少し遅れてふうふう言いながら台車を押して戻って来た。
ブラッドレーとウッドフェルドは満足そうに扇風機を見ている。
そこにアレックスが戻ってきて、
「あー重かった。はい、これ、次の実験ね。」
さっそく洗濯&乾燥機の試運転に入る。
「成功だ!だが、この動力をどうやって持続させるのか?」
「それなのですが、動力を補充するために、店に持ってきてもらう必要があります。多く売れれば、補充に回ることもできますが、そこが問題点だな。」
ブライアンが考え出した。
「たしかに、しょっちゅう動力の補充に行くんじゃ面倒だよね。それ1コでどのくらい使えるの?」
アレックスは使う立場で考えるからとても役に立つ。
「動力の減りは見てもらうとわかるのだが、扇風機のほうはまだほとんど減っていないのでわからないな。洗濯&乾燥機は終わった時点でどのくらい動力が減ったかわかる。」
「よし、扇風機は動力が尽きるまでずっと動かしておこう。いや、嬉しいものだな。こうやって実際に出来上がると。」
ブラッドレーとウッドフェルドが嬉しそうにしていて、キャサリンがそれを幸せそうに見ている。
「お義父さま、瀕死の状態で良い仕事をなさいましたわね。」
キャサリンがそう言うと、皆が笑った。
「そうじゃった。儂は瀕死なのだ。ごほっごほっ。」
ブラッドレーが言ってさらに皆笑う。
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