第31話 価格
翌日。
「事務手続きはすべて終わりましたよ。これから価格を決めていよいよ補綴薬1と2を売り出しましょう。」
「「「「「おお!」」」」」
「それで、価格なのですが、今現在市場に出ている薬でもっとも高いものは30ラドです。これは最もきつい痛み止めで、手術の後などに使うものです。しかし、これでは補綴薬の性質から言ってお話になりません。」
「たしかにそうだな。」
「では医療費の最も高いものというと、手術になります。その中でも、現在もっとも高いものは、心臓の手術で、10万ラドになります。」
アレックスが素っ頓狂な声をあげた。
「うひゃあ、王都のタウンハウスを買うくらいかあ。」
「それは貴族は出せても、平民はよほどの金持ちでないと払える額じゃないな。」
セビエスキが憮然とした顔で言う。
「でも、価値はあるぞ。」
「いや、価値は10万ラド以上だろう。」
「しかし、平民は払えない。貴族ばかりがいい思いをするのは間違ってないか。」
なかなか難しい。
「薬を使った後の対応にもよるな。」
と、ラルフ。
「というと?」
「薬を使って元気になって、それから払った分の金を民から取って本人は贅沢三昧、ということでは、なんのための薬かわからん。」
と、ロナルド。
「たしかにそうだ。」
「薬を使った後、元気になって、そこから人のために猛烈に働くというなら、10万ラドなどすぐに回収できるだろう。」
「そうすると、例えば貴族が10万ラド払い、そのうち5万ラドは儲け、3万ラドは必要経費、そして2万ラドを平民の薬代にするというのは?原材料費や人件費で3万ラドもかからないでしょ?」
ブライアンが
「原材料費はおそらく1ラドにも満たない。人件費は俺とゼレさんの時間でいうならせいぜい1時間ずつだ。ボトル代など無いに等しい。だから、必要経費は数ラドで済む。」
と言うと、アレックスは
「でもさ、ブライアンもゼレさんも、魔法使ったり呪文使ったりするわけで、それが心身疲れるから、それをリカバーするのが必要じゃない?」
と気遣う。
「当然の必要経費じゃな。」
ブラッドレーとウッドフェルドも同意する。
「俺はキャシーがいてくれれば、それで十分癒しになるから、そんな難しいことではない。」
ブライアンがキャシーを抱き寄せて当たり前のように言うと、
「うっはー、ここで見事にのろけられるとは思ってなかったよ。」
アレックスが言って、皆が笑う。
「な、なんだよ。本当のことを言ったまでだ。」
ブライアンとキャサリンが赤くなっている。
「わしはミゲールとミモザがわしとケーキでも食べてくれればそれで十分じゃ。」
ゼレがそう言うと、いつのまにかそばにきていたミゲールとミモザがゼレに抱き着く。
「なんだかなあ、2人とも愛で癒されて十分、って、幸せすぎるだろ。」
アレックスが、半ばあきれ顔で言う。
「なんだかさあ、ここって、精神的に幸せになれる場所よね。」
スーザンがそう言って、皆が頷いている。
「それなら、まあ、3万ラドから本当の経費を引いて、残りは他の製品の開発費に充てるということにしましょうか。」
「そうだな。うちもラルフチームも開発費は必要だ。」
ブラッドレーが同意し、皆も頷く。
「そうしますと、実はここまで10万ラドで話しを進めておいてなんですが、実際のところ、心臓の手術をしたところで、完全には治らず、数年寿命が延びる程度です。しかしながら、補綴薬1と2は、その後の人生が大きく変わり、しかも、寿命は100年単位で伸びます。そう考えると、10万ラドは安すぎます。まあ、今のうちに高価格で売っておいて、徐々に価格を下げればよいかと思いますがね。この薬が広まって当たり前になれば、薬もぐんと安くなりますし。まあ、そのころには別の商売を考えるということになるかもしれませんが。」
ジェームスの意見に皆は納得している。
「というわけで、最初は、どうでしょう、500万でいってみませんか。」
「うわあ、大きく出たなあ。」
「いや、でも、その価値はある。」
ロナルドが言い、ジェフとスーザンが大きく頷く。
「たぶん実際にこの薬で命長らえた人は、決して高いと思わないでしょう。」
「そうだな。まあでも、どこにでも文句いう奴はいるけどな。」
「でも、500万ラドなんて、誰が出す?」
「王家は出せますね。」
「まあ・・・そうでしょうね。」
「公爵家、侯爵家には出せるところもあるかと。」
「それは・・・あるでしょうね。」
「うちが公爵家だった時なら出せたな。」
ブラッドレーが言った。
「大商人もいるでしょう。」
「うむ、うちは最大級の商人ではないが、うち程度でも借金すれば出せるな。」
チャーリーが言い、息子たちは小さな声で「すげえ」と言っていた。
「やっぱりね。」
「じつは1000万でもいいかと思ったんですけどね、まあそこまでしなくても、いろいろ駆け引きをいれると1000万になるかと。」
ジェームスが少し悪い顔をしている。
チャーリーが
「それは、順番を繰り上げる代わりに倍払うとかそういうことか?」
「順番を繰り上げるというのは不正になりますので、すべきでないです。でも、外国で、納期を早めるということなら不正ではありませんので。また、外国はうちの国より豊かな国もいくつかありますので、そういうところは払うでしょう。」
ジェームスが自信ありげにそう言った。
「へえー、なるほどねえ。商人ってすごいなあ。」
アレックスがものすごく感心している。
というわけで、500万ラドということになった。
ジェームスが
「まあ、500万ラドは基本料金ですから、例えば腕1本500万ラドで、足の小指1本500万ラドというわけにもいかないでしょう。」
というと、皆、なるほどと気づいて
「ということは、脚は500万、腕は300万、手とか足ならひとつ200万、指1本50万、って感じかな?」
ジェフが言うと、
「そうだな、細かいところは個々でってことにしよう。補綴薬1はそれで、補綴薬2は内臓で、これは命にかかわってくるので1000万でしょうね。」
ジェームスがそれに続けた。
「「「「「異議なし。」」」」」
「なんだか、命の値段って感じがして、あまり気分のいいもんじゃないな。まあ、商売にするからにはそんなものなのだろうが。それで、ここから平民にはどのようにしていくのか?貴族と大金持ちの特権、のようになるのは避けたい。」
ブライアンが少し複雑そうな顔で質問をした。
ジェームスが
「それですが、実際のところ、脚1本分の補綴薬を1つ売ると、ほとんどが儲けとなります。それで、派手に売るのは貴族や大商人などにして、庶民にはこっそりと売る、払えるだけ払ってもらって、何か恩に感じてもらったら、ブラッドレーアカデミーで学んでもらって将来働いてもらうというのはどうですか?」
そんな提案をした。
「そうじゃな。元々、オタク集団で儲けよりも研究して世の中をよくしていきたいという動機で始めるわけだから、まあ、それなりの給料は出ないと困るが、それほど贅沢三昧をしたいわけでもないからな。なんとかなるじゃろ。」
ブラッドレーが気楽そうな顔をして言っている。
「あの、それは賛成ではありますが、将来王制を廃止するとなると、戦う必要も出てくるかもしれません。その時の資金は必要です。」
コナーがそう言うと、セビエスキグループは頷いている。
「うむ、儂は戦いは御免被るよ。過激なのは、もうこの年では無理だ。」
ウッドフェルドが言う。
キャサリンがこそこそとブライアンに話していて、ブライアンもそれに頷いている。
ブライアンが
「王制廃止ということについてですが、実は、キャサリンがそういう方面の知識があるので、一度その話を聞いてみてはどうかと思うのだが。」
と言うと、ラルフが
「それは、あのミンシュシュギとかいう話だろうか。それはまだたぶん誰も知らないことだろうが、大いに参考になり、平和的に移行する可能性もありそうだな。」
と言い、アレックスも頷いている。
「俺も戦いは嫌いだ。どんな戦いでも、泣くのは必ず弱い者たちだからな。よく考えようではないか。」
ブライアンは補綴薬のチームなので、言わばブラッドレー研究所で現在唯一金を産み出せる人間であるから、皆、尊重して聞いている。
セビエスキが
「それでは、すみませんが、キャサリン殿、どうかひとつ、ご教授ください。」
と、頭を下げた。
「あら、いやだわ、頭を上げてください。私のその知識は専門家の知識ではないのですけど、できる限りお役に立てるように準備します。よろしくお願いします。」
と、にっこり笑った。
ラルフが
「キャサリン、準備にはどのくらいの時間が要るか?」
と訊くと、
「そうですわね、明日1日いただけますか?1日分くらいしか知識ありませんから。」
キャサリンは、ちょっと恥ずかしそうにそう答えた。
アレックスが
「キャサリンってさ、ちっとも偉そうにしなくて、謙虚でかわいいよね。」
と言うと、ラルフが
「おいこら、またそうやってブライアンを刺激する。見ろ、睨んでるぞ。」
と、笑う。
「おお、こわいこわい。ブライアン、いいじゃないかよ、ほんとのこと言ってるんだしさ、俺にはラルフィーがいるんだし。」
アレックスが笑っている。
ブライアンは少々機嫌が悪く、キャサリンがそんなブライアンの顔を覗き込んでにっこり笑いかけ、ブライアンがすぐにデレた。
ブライアンはぎゅうっとキャサリンを抱き寄せ、キャサリンはそれを気持ちよさそうに目を閉じている。
「うひゃー、恥ずかしげもなくいちゃつくかよ。」
アレックスがそう言って笑うと、そこにいる皆が、一緒になって笑ったり、困ったような顔をしたりしている。
さて、翌日、キャサリンの時間が始まる。
キャサリンは心細いから助手をブライアンに頼んだ。
始める前、キャサリンは前世の記憶などと言って笑われるか気味悪がられるのではないかと心配していた。
ブライアンがぎゅっと抱きしめて、「大丈夫だよ」と言ったら、ちょっと涙目になって、でもにっこりと笑って、こくりと頷いた。
(うう・・なんて可愛いんだ。)
これはブライアンの心の声。
セビエスキが最初に
「きょうはありがとうございます。新しいことを知るのに皆とても期待しています。どうぞよろしくお願いします。」
と、挨拶をした。
キャサリンが
「きょうはお集まりいただきありがとうございます。・・・実は、これからお話することは、たぶん誰も知らないことではないかと思います。と言いますのは・・・こんなことを言うと、皆さん信じられない、私の作り話じゃないかってお思いかもしれません。ですけど、ほんとのことです。」
そう前置きをして、話を始めた。
「私には前世の記憶があります。」
その言葉で皆がいっせいに反応した。
「それって、キャサリン様は生まれ変わって今の人生を歩んでいるということですか?」
「はい、そうです。そして、私の前世は王様や貴族のいる世の中ではありませんでした。」
「その世界に行くことはできるんですか?」
「できない・・・と思います。」
キャサリンはブライアンを見た。ブライアンは
「私はいろいろ過去の文献などを調べましたが、異世界に行く方法は見つかりませんでした。もちろん魔法にもそういう者はありません。残念ながら。」
と言って、皆をがっかりさせた。
アーロンが
「王や貴族のいない世界になる時に、戦争などはなかったんですか?すんなりと移行したんですか?」
「私のいた世界は、もう何十年も前に王や貴族は廃止されていましたので、私は学校で歴史として学んだだけです。まず、その国の名はニッポンと言います。」
「ニッポン・・・」
「はい。ニッポンはとても歴史の長い国で・・・」
キャサリンは日本の歴史や象徴天皇制、日本の議会制、民主主義、議会とは、世界で社会主義や共産主義の国もあること、など、いろいろと話した。
皆は熱心にノートをとって聞いている。
最後に質問があって、すべて終わるとすっかり夜になっていた。
「おお、キャサリン、終わったか。疲れたじゃろう。」
ブラッドレーがキャサリンを気遣った。
実は、セビエスキチーム以外の皆も、キャサリンの話を隣室で聞いていた。
「すごく面白かったよー。ラルフィーも俺も、こんなに真面目に先生の話を聞いたことなんてなかったけどさ、結局面白い話だと真面目に聞くもんだなって思ったよ。」
アレックスがにこにこして、キャサリンにそう言ってくれた。
ブライアンが
「きょうのキャシーの話は、魔法を使って本にした。」
と言うと、アレックスが
「うわ、そんなことできるんだ。すごいな。それじゃ、いつでも復習できるんだ。学生が聞いたらその魔法を欲しがって大変だな。・・・あっ!」
と声をあげた。
「ねえ、ブライアン、それってさ、魔道具にできないかな。」
「それとは、講義録を作る機械か?」
「うん。今って、そういうのは書記がいて、それから本にしてって、凄い手間じゃない。でも、ブライアンはそれをちゃちゃっとやっちゃったでしょ。議事録だけじゃなくて、なんでもそういうふうに記録できたら良くない?」
「なるほど、そうだな。授業もあとで復習するように本にできる。」
「そうそう。補綴薬みたいにバカ高くはできないけど、凄く便利じゃない?」
「そうだな。魔法はともかく、動力がいるんだが・・・うん、それはなんとかできそうだ。ちょっと試してみる。」
「いいねいいねー、ブライアン最高!」
「その動力だが、どうするつもりだ?」
ブラッドレーが興味津々といった風でブライアンに訊いてみた。
「実はキャシーから前に聞いたことなんですけど、ニッポンは魔法がないからすべてを動力を使って動かしていたと。そうだったよね?」
ブライアンが言うと、キャサリンが
「はい。その動力が私が死ぬ前には問題になっていました。動力はいいんですけど、それを使うと空気や水を汚してしまって、将来、住んでる星が住めなくなりそうだと。」
「それはいかんな。」
「それで、害のない動力を作ることが研究されていました。まだ完成はしていませんでしたけど、何種類か既に使われていました。」
「ちょっと時間をください。試してみます。」
「おお、ブライアン君、ありがとう。」
ブライアンがキャサリンを抱き上げて、
「君はきょうは疲れただろうから、ベッドで休んだ方がいい。」
と言うと、キャサリンは
「ブライアン様、私、大丈夫ですから、歩いて行けま・・・」
と言いかけたが、ブライアンの顔を見て、
「ありがとう。」
「わあー、アツアツだわー。いいなー。」
「いいなあ、私もあんなに優しい旦那様がほしいー。」
女性たちが口々にそう言っていた。
ブライアンがキャサリンをベッドに下ろすと、キャサリンが
「ブライアン様、ちょっとだけ、そばにいて。」
と、甘えた。
「ああ。いいよ。」
ブライアンは腕枕でキャサリンを寝かせる。
それからキャサリンと動力の話をし、キャサリンがいろいろな発電の話をすると、ブライアンは興味深くをれを聞いていた。
が、キャサリンがあくびをしてウトウトし始めると、ブライアンはそっと腕を抜き、忍び足で部屋を出るのであった。
ブライアンはブラッドレーとウッドフェルドの部屋のドアをノックした。
「おお、ブライアン君、どうぞどうぞ。」
「はい。失礼します。あの、動力の件ですが、なにか動力が必要な試作品、ありますか?」
「ああ、あるぞ。これなんだがな。風車の応用だ。だが、動力がなあ。魔法ではいかんわけで。」
「そうですね。ちょっとお借りしても?」
「もちろんだ。どんどん試してみてくれ。」
「できるだけ早くお返しします。」
「構わんよ。じっくり見てくれたまえ。」
「ありがとうございます。」
翌日、キャサリンは昨夜ぐっすり寝て体調が良いので、ひさしぶりに子供たちに菓子でも作ろうと厨房にやってきた。
「おはようございます。皆さん、お忙しいですか?」
「いやあ、いつもと同じですよ。」
「あの、端っこを少し使わせていただけませんか?」
「もちろんです。何か作られるんで?」
「子供たちにお菓子を作ろうかと思って。」
「ほほう。どんなものでやんすか?」
「きょうはふわふわパンケーキを作ろうかと思ってます。レスターさん、味見していただけますか?」
「もちろんでやんすよ。なにか手伝いましょうか?」
「これは簡単ですから、味見だけ、お願いしますね。」
「パンケーキっつうとメイプルシロップとか生クリームとか要るんで?」
「そうですね。ありますか?」
「もちろんありやすよ。じゃあ、そのくらいの準備はやりますぜ。」
「ありがとう。助かります。」
「とんでもねえ。」
・・・・・・
「レスターさん、ちょっと味見をお願いできますか?」
「へいっ!待ってましたーっ。」
レスターがやってきて、パンケーキを見て
「こ、こりゃあまたずいぶん分厚いんですねえ。」
「ふふふ、はい。ふわふわですので。」
レスターが一口食べて
「ひえー、これがパンケーキっすか?ほんとだ、ふわふわだ。」
「料理長、俺らにも一口。」
「ちょっと待ってろ。美味くて止まらん。」
「ふふふ。気にいっていただけました?皆さんにもありますので、ちょっとお待ちくださいね。」
「うおー、俺らもいただけるんで?」
「もちろんですわ。ご感想をお願いします。」
「へ、へい。では。」
皆が一口食べて、レスターと同じ反応をした。
「こ、これが、パンケーキなんですかい?普通のケーキよりふわっとしてるっすよ。」
「うめえーーーっ。」
「おい、おまえ、もう食っちまったのかよ。はえーな。おい。」
「だって、止まらねえんだもんよ。」
レスターが
「あの、キャサリン様、これ、作り方を教えていただけねえでしょうか。」
「もちろんですわ。はい、これ。」
キャサリンは作り方を書いてきた紙を差し出した。
「メレンゲをまぜるとこんなふうにふわふわになるんですよ。あったかくても、さめても美味しいのでちょっとお腹がすいたときのために、作り置きもできるのが便利なところです。」
「こりゃあ、やみつきになりますねえ。ガキたちも喜ぶな。」
「ふふふ、いっぱい作って、みなさん全員に差し上げようと思ってます。」
「おっ、そうですかい?じゃあ、あの、俺ら練習させてもらえますかい?」
「あら、ほんと?じゃあ、よろしくお願いします。」
それから厨房はパンケーキ祭りになった。
作りながら、レスターたちとキャサリンが話している。
「キャサリン様、レストランを開くというのは本当なんで?」
「ああ、そのことですか。それはね、うちの王都の邸で働いてくださってた方々が、うちが平民になったために、職を失うのはいけないので、邸をレストランと宿屋にしたらそこで希望なさる方たちは働き続けていただけるでしょ。そう考えたんです。話したら、みなさんそうしたいっておっしゃるから、今は準備をしていただいてるんですえど、そのうち開店します。私もいっぱい働こうと思ってたんですけど、赤ちゃん授かったのでちょっとできなくなってしまって、申し訳ないと思っているんですの。」
「そうですかい。ウッドフェルド様も、キャサリン様も、良いお方ですねえ。楽しそうだなあ。それで、ハンバーガーとか芋の揚げたのとかも出すんですか?」
「はい。庶民向けのね、安くて量が多くて美味しいものを出そうって言ってるんです。」
「俺らにも、いろいろなメニュー、教えてもらえませんか?」
「はい。もちろんです。私も作っていただけると嬉しいですわ。余裕ができたらこちらでもレストラン出してもいいかもしれませんわね。」
「へい。そうなったら、腕をふるいやすぜ。」
「さあ、できましたわね。さすが、みなさんプロだから、初めてでこんなに美味しく作れちゃうんですねえ。」
「へっへ、ありがとうごぜえやす。」
研究所の皆は、自分のチームの部屋か、皆が集まる部屋にいる。今は皆研究中なので、各チームにパンケーキを配っていく。
おかわりがいる人は談話室まで、と一言添えて。
配り終えたのとほぼ同時に談話室に人が集まってきた。
「余分、まだあります?」
「これ、なんですか。じつに美味い。」
「ほんと、すごく美味しかったです。食べだしたら止まらなくて一気に食べちゃいました。」
「まあ、うれしいこと。ありがとうございます。」
「キャサリンしゃま、おかありー。」
ミモザもお皿を持ってきた。
「ミモザちゃん、これ、好き?」
「うん、すごくおいしいよ。もっともっと食べたい。」
「ありがとう。嬉しいわ。はい、じゃあみんなで食べてね。」
「ありがと。」
「おい、転ぶんじゃねえぞ。」
研究所はパンケーキの匂いで幸せな雰囲気だ。
キャサリンが皆と楽しそうに談笑しているのを、セビエスキはじっと見ていた。
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