部屋割り、または入学

 入学式当日。ぼくちゃんはいつもより早く起き、何故かもうしわくちゃになっている制服に腕を通した。不思議な形だからきれいに保存するのが難しいのだ。なんか、こうブレザーと学ランを合わせた感じの制服で。

 そんなふうにグダグダと過ごしてると時間なんてあっという間に溶けてしまうのですぐに魔法式を書き上げる。

「転移魔法式、発動!」

 移動したのは前に襲われかけたあの場所だ。少なくともいい思いはあまりしなかった。アリバイ横丁は面白かったけど。

「うぇ、もうここには一人で寄らないでおこ。」

 そう言って駆け足でそこを抜けると一気に大通りに出た。すると、ぼくちゃんと同じで転移魔法で飛んでくる生徒を少し見かけた。しばらく見ているとその中のひとりに声をかけられた。

「やぁ、君は愛に生きているか?」

 は?

「僕は、アンへの愛に生きている。君はどうだ?」

「誰ぇ?」

 なんか面白そう。それにしてもこの年で恋人いるとか進んでんな。

「まぁまぁそんな事言わずに。ほら、ほらさっさといいなよ、じゃないと、」

「じゃ~な〜いと〜?」

「殴るよ♡」

 こいつ薬でもやってんの?目がガンギマッてる。けど、絶対に面白い。

「君への愛に生きてるよぉ。なんかぼくちゃんたち親友に成れそうだねぇ。」

「なるほどね、友愛に生きるのもいいかもしれない。決めた!僕はアンへの愛を捨てて君の相棒として日々を過ごそう。」

 愛ってそんなに簡単に捨ててよかったっけ?

「え?アンは恋人じゃなかったのぉ?」

「いーや。僕が勝手に付け回してるだけの女の子だね。」

 怖。普通に恐怖。

「そっかぁー」

「じゃあ一緒に部屋割りを見に行こうか。それから入学式に行こう。あと名前は?僕はリアノ・エイド。さぁさぁ君も名乗って。」

 ここまで言われたら名乗るしかないじゃないじゃん。

「ユウ・アンニだよぉよろしくねぇ、じゃあ行こぉ。」

 そう言って無理やり会話を切り上げて部屋割りを見に行った。入口から寮まではかなり離れている。それまではリアノと話さなければいけない。面白いけど正直言って辛い。手ぇ出さなきゃよかった。いや、自業自得ではあるけど。

 やっと寮についた。そして最悪の結果もついてきた。こいつと同じ部屋だった。となりで運命だ!とか叫んでるリアノはおいて荷物を置きに、部屋へ行く。ここでぼくちゃんの頭も回りだす。リアノとクラスも一緒てこと、、、?


 意味がわからない読者の皆さんに説明しよう。厨ニ中は、助け合いができるように〜とか言ってクラスメイトが同室になるのだ。しかも名前順で。アンニの“ア”と、エイドの“エ”じゃ随分と離れてるかもしれないが、それも当然。この学校は人学年五十人なのを無理矢理5クラスに分けているのだ。素直に馬鹿なの?と思うが、それは人数が約三倍ある忠一中と同じだけの予算が振り分けられてるかららしかった。


そんなこんなで気持ちを落ち着かせていると、ドアがバーンと開いてリアノが入ってきた。

「さぁ、荷物をおいたら入学式に行こう!」

「そ~だねぇ」

入学式が執り行われるのは、体育館。サイズはかなり大きいと思った。その上人数も少ないのでかなりどころではなくめちゃくちゃなサイズとなっている。

「じゃそこら辺に座っててね〜」

その声は壇上から聞こえた。それから一、二分まって全員揃ったかな、という頃になるとその声がまた響いた。

「これから、入学式を始めます。では、最初にこの学校について説明します。」

「この学校は、いわゆる忠一中の分校です。なぜ、この学校ができたのか。それは、秀才と天才の違いからです。

その2つは比べるとあまりにも凄惨な差があって、その道を挫折する人が増えたのです。なので、人数が多かったと理由をつけて別の、同じ学校を作りました。そして、こっちはどちらかかというと天才サイドです。そう言うと傲慢に思えるかもしれないけれど、事実なので仕方がないですねーw。

まぁ、私はそういうのに興味はないけれど、隔離されるまでに天才と言われているのなら、秀才に絶対に勝ってください。じゃないと、校長をやってる私のプライドもずたずたです。だって、生産なさがあるから分けられてるんデショ!負けたらいみなくなるじゃナイ!そしたら天才ってことを軽んじられてジ・エンドだってことジャン!ふざけないでほしいヨー!」

 これがいわゆる大人の事情ってわけか。そして、なんか最後の方校長ヒスってたな。あ、校長が引きずられってた。そして別の先生が壇上に立つ。

「では、生徒会長から一言。それで式はお開きにします。

面接の時の面接官がそこには立っていた。周りはざわざわとその事実の揺れている。

「静粛に。私はこの学校の校則に違反しなければ何も言わない、以上。」

 なんか随分とあっさりしたような感じのスピーチだった。特にヒス校長の後だとさらにあっさりしたような感じになっている。比喩としては、麺つゆの素を通常の十倍薄めた感じ。そんな閉まらない感じで入学式は終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る