観光、または荷造り

 面接が終わったので、すぐさま家に転移でもしようと思ったが、せっかく中央地区に来たのだからと、まだ入学まで余裕があるからと、気が狂ったのか、観光の準備を今から始めてしまった。ちなめに今は太陽が沈みかけている時間帯だ。それの何が悪いのかと皆様疑問に思うだろう。忘れてはないだろうか、ぼくちゃんはまだ12歳なのである。どんなに大人びていても、新進気鋭の天才小説家であろうと、どんなに魔法に優れていても、体は未発達な小学校エレメンタリレベルのおこちゃまなのである。それに加え悲しきかな、ぼくちゃんは身長が低いのだ。そんなだからいくら剣が上手でも相手にその刃が届くことはないのだ。

 後、この世界では自衛用に携行が許されているのは剣だけなので正直に行って身を守れないのだ。普通に保護者もいないし。そのくせ金だけは持ってるんだからいいカモだ。

 そして、これが最重要である。ぼくちゃんは、辺境のコクフ地区から来ていて、中央の地理を全くと行ってよいほど把握していないのだ。

 まぁ、そんな後悔は後にしかできないわけで、とにかくぼくちゃんは観光を始めてしまったのだ。

 それにしても、中央には初めて見るものがたくさんあって、特に路地裏にあるアリバイ横丁というのが面白い。東西南北様々な土産物が売っていて、使えそうなものから怪しげなものまで目移りしてしまう。そのまま道の奥へ、奥へと進んでいくと袋小路に突き当たった。戻ろうかと思うとすでに人気はほとんどなく、危なそうなふたり組だけが目の前にいた。

「よう、お坊ちゃんなんでこんなとこにいるんだい?」

 心臓がバクバクする。できるだけシンチョーに、強気に、怒らせないように答える。

「知的好奇心の赴くままにぃ。」

「へぇ、じゃぁ世の中のあんなことやこんなこと、教えてやろう。」

 やばい。さすがにぼくちゃんも抵抗しなければやばい。ぼくちゃんは剣で抵抗はできない、魔法も帰り道のために余力を残しておきたいが、、、「いや、今から帰宅するかぁ」

「あ゛?」

「転移魔法、は☆つ☆ど☆うぅ」


 、、、家に帰ってきた。強制転移魔法を使ったせいで魔法力の消費がやばい。

「観光なんてしなけりゃよかった、、、、、、、、」

 この一言に尽きる。まず魔法というのは数式のようなもので、魔法力はペンのインキのようなものだ。だから無尽蔵ではないし、色々と制約もあるのだ。

「今日はもう何も考えたくないやぁ、寝よぉ」

そこにかかってくるなんとも間の悪い電話。編集からのだ。

「なにぃ?こんな夜更けにぃ?」

『まだ八時前ですよ、やっぱどんなに大人びても子どもですねぇ。「う゛る゛ざい゛ぃ」はいはい、ところで先生、厨ニ中受かったんですね、小説とかはどうします?やっぱ学校が学校ですし学業の方を優先してもらっても構わないんですけど、』

なんでそのことを知ってんだ?この編集。

「ん〜多分連載はできないからぁ、暇なときに話を書いてドカンと投稿する感じでお願いしてもいいぃ」

『はい、編集長にはそう伝えておきます。では』

「バイバ~イぃ」

切れた。けどどうしようか、目も覚めてしまったし、荷造りでもするか。

「、、、やばい、まとめる荷物が段ボール一個に収まるくらいしかない。」

 ぼくちゃんが所持しているのは小型魔法液晶板こと小魔法コマホ。魔法のペンと原稿用紙。金。服同じの5着にコート一着。以上だ。アクセサリーの類もあるにはあるが、すべて身につけている。自炊はしないタイプだ。十分金はあるし、制服も支給だ。私服はコートと服二着さえあれば解決する。

 三十分もかからずに終わってしまった。まだ寝る気になれない。時間をどうやって潰そう。校則読んだり勉強したりして過ごすか。だがそれでもそこまで時間が潰れないのは明白だった。校則はたった一条。法律を破らないこと。、、、これ校則いらなくね?じゃぁ勉強をすればいいのだが生憎ぼくちゃんは天才だ。覚えてないことなどない。そんな事を考えて瞬きすると、いつの間にか朝日が登っていた。いつの間にか寝ていたようだ。そんなふうに日常を過ごしていると、あっという間に入学の日になった。

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