王立王都中央地区第二高校附属中学校

照門テグス

受験、または面接

 この春、僕ちゃんは厨ニ中(王立王都中央地区第二高校附属中学校)に入学する。いや、まだ入学式どころではなく試験が始まるのだが、それは関係ない。なんてったってこの新進気鋭の天才小説家であるユイ・アンニ様が入学するといったなら入るのだ。

 まぁ、必ずしも厨ニ中に入れるわけでもないが。もしかしたら、だけど忠一中(王立王都中央地区第一高校附属中学校)に行くかもしれないのだから。だけど多分僕ちゃんは厨ニ中に行くとは思う。なぜなら、忠一中というのはいわゆるTHE・優等生って感じの奴らが行くところだし、厨ニ中はとにかく問題児が多いらしいから。ぼくちゃんは自分で問題児なとこを自覚しているから確信が持てる。それに、もしも忠一中に行くことになったら多分_いや、絶対に切腹をする。全財産を厨ニ中に寄付して死ぬ。

 まぁそんなことを思いながらも試験会場についた。この高校系列は非常に人気が高いので受験人数は一万人を優に超えている。だから高校の空間を魔法式で広げた特設試験会場で受験をするわけだ。構造とかもリアルで、ずっと同じ式を使いまわしているらしい。銅鑼の音がなったのでもうすぐ試験か、と席につく。試験官の一言で試験が始まる。皆その瞬間を誰よりも早く感じ取ろうと静かに聞き耳を立て、いつでも鉛筆に手を伸ばせるようにしている。

「試験開始、百二十分」

 試験が始まった。この学校の出題形式はちょっと変わっていて、主要五教科_語学、数学、社会科学、錬成学、魔法式学、魔法学の中からランダムに問題が出題される形になっていて、教科ごとの区切りはない。そして、最大の特徴が時間の割に問題数が多いということだ。なんと二百四十問ある。問題自体は簡単なのだが、一問三十秒で二時間かけて解くというのが受験者の集中力を切らせる。それに、何問かが難しい難易度に設定されているので、それも見分けなければいけない。つまり、僕ちゃんのように天才でなければ最後まで解き明かすのは至難の業、ということだ。

 終了の合図が出る。僕ちゃん的にはなかなか手応えがあった。そして、次の試験は実技だ。また新しい空間を生成しなければならないようなのでしばらく_小一時間は自由時間らしい。他の奴らは同郷の者たちと喋ったりしているが僕ちゃんにはこの場に知り合いがいないのでそこら辺にいる人を引っ掛けて話す。

「ねぇねぇ、君名前と受験番号はぁ?出身地区も教えてぇ?後、小説は好きぃ?」

 相手は少し困った顔で応答する。

「私は受験番号ラッキーセブンのミリミ・ラック。フラン地区出身。小説は、、、あんまり読まないかな、童話とかをたまに読むくらい。やっぱ幸せな物語を読むと自分まで幸せに成れたみたいでいいよね。あなたは?」

「ぼくちゃんはぁ、アンニ、10203番。小説はバッドエンドが好きなんだぁ。特にメリバ系ぃ。感情の表現が何よりも良くてさぁ、「アーソウデスネ。」

なんだろう。食い気味に肯定された。

 そうこう話している間に空間の生成が完了したようだ。

「あ、じゃあねぇ、どちらも合格して会えるといいねぇ。」

「あっはい。では」

 どこからともなく試験官の声が聞こえてくる。

「今から実技試験をおこなう。定位置に飛ばすので用意しろ。飛べなかったやつは論外だ。では、健闘を祈る。」

 大勢の人たちを残して、僕ちゃんを含めた二百名ほどが飛んでゆく。

 試験の内容は、筆記と比べて、随分と楽だった。そりゃもう拍子抜けするくらいに。何人かが魔法の発動に戸惑っていたけれどほかでカバーできるくらいのミスだし。不安になるほど試験は簡単だった。

「では、本日で試験を終わる。結果は後ほど中央掲示板に張り出しておくので確認するように。あと、質問があるならこの場で共有するように。」

 シンとした雰囲気の中僕ちゃんは一人手を上げた。目立ちたがり屋なのだ。質問を頭からひねり出す。

「ここに飛ばなかった人はどうなるんですかぁ?もしかしてぇ、、、、、、不合格ぅ?」

「さぁ、友人でもいたのか?」

はぐらかすように言う。

「いいえぇ、気になっただけなのでぇ。」

「ならいい。各自解散だ。合格者は面接があるので忘れぬように。」

ぼくちゃんは少し不思議な感覚を体に宿しながら帰路についた。

翌日、中央掲示板前に人がわらわらと集まってきていた。そこに書いてある番号に10203番はあったがラッキーセブンはなかった。落ちたのだろう。けれど不思議に思ったのは、番号の数が二百ほどだったのだ。それを見るにあそこに飛んだ全員が受かったのだろう。飛ぶというのは適正を見る試験みたいなものかとぼくちゃんは一人納得した。

 そのまた翌日、僕ちゃんが面接会場に行った。そこにはあのときの試験官がいた。

「ぜひ、フラットに構えてくれ。」

その言葉にぼくちゃんは背筋を伸ばす。

「では、自己紹介をしてくれ。」

「ぼくちゃんはユイ・アンニ。もちろん十二歳ぃ。新進気鋭の天才小説家ぁ。以上」

「では、どちらに行きたいかな?絶対に実現するとは限らないが、、、」

「王立王都中央地区第二高校附属中学校。」

要望を簡潔に伝える。試験官は少し笑うと封筒を取り出した。

「君にはこちらの切符を上げよう今すぐ見てご覧。」

中を見ると厨ニ中の学生証と生徒手帳が入っていた。

「ありがとうございましたぁ」

「これからは寮ぐらしになるから荷物はまとめておいたほうがいいよ。」

ぼくはるんるんとした気分で、会場を出ていった。

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