まだ見えぬ深い海の底に潜る心地――"シンソウ"に迫る物語

まず初めに、簡単なあらすじです。
主人公は召喚者として、不思議な――地球に似ているようで、どこか異なる世界へと呼び出されます。
しかし「召喚者だから」という理由で不合格とされ、本来襲撃されるはずだった場所へ転送されてしまいます。
そこから紆余曲折を経て、最終的には仮雇用として働くことに。
……ここで第一章が終わります。

第一章を読み終えても、物語全体の輪郭がはっきりとは見えてきません。
正直、その点にさらに驚かされました。
けれど読み進めるうちに―その理由にも納得せざるを得なくなります。

それは、ひとつひとつの描写が非常に丁寧であること。
発想の独自性。
そして、いくつもの伏線が静かに確実に散りばめられていることです。

特に印象的だったのは作中に登場する「転生者」の設定でした。
人格を必要としない肉体と、肉体を必要としない人格を掛け合わせるという発想。
本来、優秀で選ばれた存在であれば、肉体ごと送り込まれるはずなのに、そうではない。
その事実を淡々と語るタタン氏(召喚者である主人公や転生者たちを呼び出した張本人)の一面には思わず背筋が冷えました。

斬新な設定と謎を紐解いていく物語。

以下のような読書様に―特におすすめしたい作品です。

・少しずつ物語を辿るのが好きな方
・考察することが何よりも好きな方
・ラノベ的な「転生者」の概念を覆す作品を読みたい方


最後に。
物語の進行はゆっくりですがその分、一歩一歩が確かな意味を持って進んでいきます。
今後も少しずつ読み進めていくのが楽しみな作品です。

また、本作のコメント欄には読者の方々による多様な考察が溢れています。
読後には、ぜひコメント欄も覗いてみることをおすすめします。

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