第6話 友達

高木さんの離婚は5月に成立した。

会社では何事もなく過ぎていく。

玲子は家と会社とジムと書道教室に明け暮れていた。

結婚なんて、遠い話のように思えた。

ただ、書道教室に通い始めたころは美嘉さんを意識して師範目指して頑張っていたが、その美嘉さんと高木さんがあっけなく別れてしまった。

もしかして、自分にもチャンスがあるかもしれない。

淡い期待を玲子はしていた。


そんな中最近、良太の機嫌が不機嫌だった。

どう接すればいいかわからない。

書道教室でも、良太はまだ初級コースだ。

「おい、玲子。帰りに喫茶店で話さないか?」

「いいよ」

なんだか良太が最近無口だ。


喫茶店に着くと良太はコーヒー、玲子は紅茶を頼んだ。

「玲子、高木さん離婚したな」

「あっけなかったね」

「狙ってるんだろう?」

「狙ってないわよ。今、師範を取るのに忙しいんだもん」

「俺にはわかるよ。俺は結局都合のいい男友達だったんだな」

「なによ。その過去形。別に都合のいいとかなんとかないわよ。ただの友達だよ」

「それが嫌なんだよ!」

二人は黙ってしまった。

「俺だって高木に負けない。仕事で見返してやる。見てろ。玲子」

そういうと伝票をもって、良太はレジに向かった。

高木さんを好きな気持ちは辞められなかった。

職場で声が聞こえる時の幸福感。

広い背中。

大股で廊下を歩く姿。

髪の毛をかきあげるしぐさ。

一緒の空間にいるだけで幸福感があった。

その一方で良太を悩ませている。

良太は良太で友達としか思えない。

玲子は悩みを拭い去るように家では心を統一して書道の練習に没頭した。

没頭して、没頭しまくった。

そして、師範コースが終わらない前に、埼玉県展に書道の部で入選を果たした。

とても嬉しかった。

自分の悩みと対峙できたようで、自信がついた。

今は、心の中には美嘉さんはいなかった。

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