第3話 今年のバレンタイン
玲子は勉強のかいあって、美術検定3級合格した。
マナー教室も終了した。
ジムも続いている。
しかし、良太から美嘉さんが弁護士であると聞かされた。
わたしは何をしているのだろう?
美嘉さんに勝つためでもないのに、美嘉さんが頭もよくて美人で何でもできる女性であることに敗北感を感じていた。
「でも、どうやら、高木さん夫婦今うまくいってないらしいぜ。美嘉さん弁護士なだけあって気が強いんだと」
高木さんはそんなことを玲子には言わない。
高木さんも出世コースを進んでいて、仕事一直線だ。
玲子の入る隙はない。
それにもう今じゃ不倫になる。
玲子は絶対に不倫は嫌だ。
玲子は習い事でもしようと思い書道教室に入った。
「お前、何やみくもにあれこれ手を出してるんだよ。見てて滑稽だぞ」
良太は言う。
玲子はとにかく高木さんよりも夢中になるものが欲しかった。
書道教室に行こうと席を立った時高木さんがふいに言った。
「今年はチョコくれないんだね」
そうだ。
今日はバレンタインだ。
あれから一年がたってしまった。
「まあ、既婚者にはもう用はないか」
「書道教室に行くんで失礼します」
「玲子ちゃんも変わったね。頑張ってるんだね。いろんなことに。そういう子好きだよ」
「今更何を言ってるんですか。奥さんが待ってますよ。失礼します」
玲子の鼓動はバクバクしていた。
その言葉は一年前に欲しかった言葉だ。
ロビーに向かう途中、涙が出た。
なんでわたしこんなに頑張ってるんだろう。
こんなに頑張って報われることってあるのかな?
「玲子ー!待てよ!俺も今日から玲子と同じ書道教室に通うことになったんだ」
振り向くと良太が駆け寄ってきた。
どこまでも追いかけてくる。
馬鹿なやつ。
本当に馬鹿なやつ。
玲子は涙がまたバーッと流れてきた。
「どうしたんだよ?俺悪いことした?」
「馬鹿。チョコなんてあげないよ」
「わかってるよ」
「行くよ」
高木さんのいる9階の窓は明かりが煌々と光っていた。
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