神稚児祭り 前日 跨道美果の邪推

 大晦日の前日。正午にはいよいよ、神稚児が発表される。

 俺たち、くちなし村の村民は例大祭までに整えなきゃいけない道具の類いを全て整え、あとは泡足による神稚児の発表を待つだけだった。

 今年、数え七歳を迎える子は十三人。試験は泡島神社の分社で、一日に四人ずつ、三日目だけは五人で行われた。華恵の試験は一日目に終わっていたので、公民館に集まった俺たちは口々に今年誰が選ばれるのか。もし、華恵が選ばれたらどうしようか。などと、ある事ない事を話し合っていた。俺は妻と英語で書かれたパンフレットを広げつつ、写真を眺めた。

「外国の学校っていうのは洒落ているのね。学費で無駄遣いしているんじゃないかしら?」

「はぁ、嫌な事を考える。そんなのはどこにでもあるじゃないか。それに、今回は留学の費用を向こうの御国が出してくれるって言うんだから、俺たちが負担する訳じゃない。泡足さんのおかげだ。あの人が働きかけてくれたから、その洒落た学校が一枠設けてくれたんだぞ」

「そうだけど……。本当に大丈夫かしら。もし華恵が選ばれたら、私、ちゃんと喜べるか心配だわ」

「そんな心配より、飯の心配でもしておけ。いざとなれば、飛行機に乗って迎えに行けばいいだけじゃないか」

「まぁ! 小学校もやっと通わせられているくらいのあなたの稼ぎで、飛行機に乗れるなんて思わなかったわ」

「飛行機がダメなら船で行けばいいだろう。ガス欠したら漕げばいい」

 それは、もし宝くじの賞金が当たったらどうしよう。というのによく似ている。要するに、俺たち家族は心の底で『うちの子は大丈夫だろう』と、考えていたのだ。よその家も、一部を除いて同じような顔をしている。

 本来なら、泡足さんや組合長に言われた通り、跨道の案内をしなければならない俺だが、『当たり年の娘がいる』と知った跨道の気遣いに甘え、年末のひとときを過ごしていた。それというのは、ほかでもない。跨道にそうして欲しいと頼まれたからだ。


 少し遡る。

 二週間とはいえ、大学生の一人暮らしを心配しない奴はいないだろう。一度頼まれた責任というのもある。

 跨道が学校に行った翌日の夕方、彼の借り住まいを訪ねた俺は、テーブルの上にノートと資料を広げたまま身動き一つしない様子に肝を冷やし、それとなく学校での生活を彼に聞いたものの、資料を読むのに集中しているのか、上の空だ。

 俺は致し方なく席を外し、電話で広瀬に訊ねた。

 すると、跨道はアルバイトにも関わらず、たった二日間で他の職員が尻に火を付けられるほど一生懸命働いていたという。なにをやらせても器用にこなすようで、校長に至っては、一貫校になってからも続けて貰えないだろうか。と、アプローチをして、一秒後に振られたらしい。休憩時間中には、校長の厚意で備品のパソコンで調べものをしたり、学校新聞のバックナンバーを読ませて貰ったりと、精力的にレポートの資料集めをしていたというじゃないか。

 尋常ではない仕事量だ。慣れない環境で疲れが溜まらない訳がない。かといって、飲みながら話でもしようかと誘えば、酒は一滴も飲めない体質だという。気を遣って近所の住人が差し入れを持って来たりもしたようだが、おかげで三食そばになっても、まだ余るほど冷蔵庫にそばと薬味しか入っていないのだから、本末転倒だ。俺はせめて、うまい物でも食いに行こう。と、何とか連れ出すことに成功した。


 久しぶりに訪れた馴染みの店、うまい料理でご機嫌になった俺がうっかり口を滑らせたせいもあるだろう。彼は俺に娘がいると知るや否や、恐ろしい速度で反応した。

「娘さんは、今年いくつですか」

「七歳になる。当たり年ってやつだ」

「でしたら、今すぐ帰ってください」

 随分無碍な言い方をする。いくらかへそを曲げた俺に、跨道は眉間に深く刻まれた皺を撫で伸ばしながら謝った。

「きつい言い方になってしまいました。ごめんなさい。でも、こうして僕とご飯を食べている時間は勿体ないです。ぜひ、帰って家族と過ごしてください」

「おいおい。今生の別れが近い訳でもないのに、なんだってそんな言い方をするんだ」

 跨道は下唇を丸めて噛み、長く唸る。言葉を探しているというか、どう伝えたらいいのか分からないけれど、とにかく、言葉にしなければいけない。と、焦っているかのようだ。

「図書館が開いていれば、過去の地域新聞を確認できるんですが……。事実がない以上は確信を持てないので、上手く言えません。でも、これだけは言える。もし、望月教授がノートへ遺した様に、神稚児祭りが危険な神事だとしたら。その危険は、間違いなく神稚児本人に向けられる物です」

「危険。そんなの、島にいる毒虫か動物がオチだろう。泡足さんが付いて行くのに、それ以外、子ども達がどんな危ない目に遭うって言うんだ」

「それは……。ダメだ……。まだどれも、邪推レベルだ。話しても、慣れない環境で働いているから、気が変になったとしか思われない」

 俺は頭を抱えてぼそぼそと呻く跨道の肩に触れ、出来るだけ声を和らげる。

「何がそんなに不安なんだか知らないが、大丈夫だって。俺の子が神稚児に選ばれる訳がないしな」

「どうして言い切れるんですか?」

「あの子の代には凪咲って子がいるんだ。運動が出来て、頭も良いし、うちの子とタイプは違うが、整った顔をしている。人見知りが激しくて水泳嫌いなのがネックだが、まあ、大した障害にはならないだろう。選ばれるのは、ああいう子さ」

「そういう問題では……。いや、今はそれで良いか」

 歯を見せて笑うと、跨道は釈然としないながらも、頷いてみせる。それから、改めて念を押した。

「僕のことは気にしなくていいので、出来るだけ娘さんから目を離さないであげてください。難しいことはありません。一緒に過ごすだけでいいんです」

「分かった分かった。あんたがそうしてくれって言うんなら、そうするよ。漁も休みだし、俺にとっては願ったり叶ったりだ」

 こうして、俺は跨道の案内役を免除され、だらだらとした年末を過ごせるようになった訳だ。


 大晦日前日、正午がやってきた。

 格式高い正装姿、神楽鈴を手に公民館へ現れた泡足は、顔中白粉を塗りたくり、能面の様な顔をしている。その表情は硬く強張り、眉一つ、上唇が微かに震える様子さえない。泡足は地に足を付けず、中空に浮かんでいるのではないか。と、錯覚するような足取りで公民館の真ん中に佇むと、二つ、鈴を鳴らした。

「ヒキアシタヂカラヲノミコトよりくちなしの神稚児へ告げる」

 朗々と響く声からは、泡足という人間らしさを微塵も感じさせない。それは、泡島に祀られている神様が、彼の中から人間らしい感情の一切を取り払い、仮初の身体を借りて現れたかのように感じられた。泡足は続けて、神稚児の名前を呼んだ。

「汝――網代華恵よ。これに従いては役目を勤め、過去、現在、未来の平穏に祈りを――」

 泡足が祝詞を告げている。だが、俺は名前を聞いた瞬間、呆然としてしまい、何も聞いていなかった。

「お父さん! わたしよ! わたし、えらばれたよ!」

 強く袖を引く感覚が、俺を現実へと連れ戻す。視線を下げれば、華恵がふっくらと赤らんだ頬を染めて笑みを浮かべていた。俺は無邪気に喜ぶ華恵の前に跪き、抱き締めることしか出来ない。

 俺と華恵を、妻がまとめて抱く。彼女の顔は決意に満ちて輝き、幼い娘の旅立ちを祝福していた。

「ええ、華恵。あなたが選ばれたのよ。あなたは優しい子だから、きっと大丈夫。外国へ行っても、すぐに友だちが出来るわ」

 それは俺も疑っていない。だが、何かが胸をざわつかせて止まない。宝箱が開けられないようにわざと捨てた鍵が、ひょいっと出てきたかのような、嫌な感覚だ。なぜこれほどまで不安に駆られているのか、理解できない。

 ふと顔を上げた拍子に、凪咲と目が合った。彼女はふいと顔を伏せ、長い前髪で顔を隠している。俺は思わず立ち上がり、凪咲とその親を睨みつけた。見間違いか、それとも、錯覚か。微かに、彼女の口角が上がっているように見えたのだ。

「なにがおかしい!」

 俺は叫んでから、慌てて口を閉じた。横目で泡足の様子を窺い、能面よろしく無表情な顔に腹が立つ。華恵が神稚児に選ばれたというのに、どうしてこれほどまで心が乱されるのか。考え、彼女が海外へ行くことになるからだ。と、それらしい言い訳をしてみたものの、そうじゃない。と、胸が騒ぎ立てる。

 何か、俺と華恵の間で、致命的な勘違いが起こっているのだ。だが、それが何か分からない。

「すみません、席を外します」

 俺は村民たちの冷ややかな視線を一身に浴びつつ、公民館の外へ逃げ出した。


 冬の風は冷たい物だが、海の近くに暮らしていると、その風が他所の地域に比べて温いことに気づかない。

 事実、学生時代に数年ばかりくちなし村を離れて村へ戻った俺は、すっかり冷たい風の感触を忘れ、温い風に慣れていた。重たい風が足首にからみ、遠ざかっていく。

「ちくしょう」

「こんにちは」

 人目をはばからず吐き出した悪態に、くぐもった挨拶が応える。思わぬ返事に顔を上げると、外套の懐に両腕を引っ込めた跨道が立っていた。

「神稚児は」

 神稚児という言葉に、冷めきった愛想笑いが零れ落ちる。

「うちの子だ」

 跨道は何も言わず、少々気まずそうに足を揺らして周囲を見回すと、懐から一枚の写真を取り出して見せた。

「これを見ていただけますか。泡足さんからお借りしたものです」

 それは俺が七歳の時、神稚児祭りに参加した時のものだ。

「この子について、何か思い出すことはありませんか」

 外套の袖を広げるように伸ばした跨道の指が、神輿に乗った神稚児をなぞる。まるで、背後から覗き込まれないよう身体を使って隠すかのようだ。俺は差し出された写真を手に取り、眺め、首を傾げた。

「神稚児か? こいつなら、外国の学校に留学したよ」

「いえ。そうではなく。名前とか、あだ名とか。この子と一緒に過ごした時のことです。何か憶えていませんか。どんな子だったとか、こういうことが得意だったとか」

「はぁ。中学生のころだって覚えちゃいないんだぞ。そんなこと、覚えているはずないだろう。昔のゴシップが聞きたいなら、俺じゃなくて女に聞けよ」

 跨道は手を伸ばして写真を抜き取ると、懐に仕舞った。そして項垂れた首を横に振り、もごもごと何事か呟いた。だが、ただでさえくぐもったしゃべり方をする奴が、唇を開かないで呟いた言葉が聞き取れるはずがない。

「さすがに、誰かが覚えているだろう」

 励ますように呟いた俺の眼前に、跨道の腕が伸びる。手には一封の茶封筒を持っており、それなりに厚みがあった。跨道が、中から古い学校新聞の写しを取り出す。月に一度発行される学校新聞を、縮小コピーしたもののようだ。彼は、一年分あります。と、断わりながら、それらを手渡した。

「あなたが小学校二年生の時に発行されていた、学校新聞のコピーです。保管されていた限りですが、神稚児祭りの当たり年と、前後一年間。それから、直近七年間分の新聞は全て拝見しました」

「そりゃあ、ご苦労なことだ」

「神稚児はお祭りの後、外国の学校に留学した。間違いありませんか?」

「なんだか妙に突っかかるじゃないか。ったく、俺は覚えていないが、学校のパンフレットだってあるし、皆がそう言っているんだからそうなんだろう?」

 跨道は学校新聞の写しをぱらぱらとめくり、一枚を抜き取った。その記事は英語で書かれていたが、インフォメーションの文字は簡単に読み取れる。

「パンフレットにあった学校の、広報画面です。ここには近隣諸国との緊張状態が緩和した為、外国人留学生の受け入れを再開する。と、書かれています。ここの日付を見てください。三か月前です。この学校は七年前からこの時まで、留学生の受け入れを中止していました。この学校が受け入れを中止していた六年間。バックナンバーを調べた所、海外留学先の学校はいくらかの補助があったとしても、とても手が出せないような私立の学校が紹介されています。事実、小学校で海外留学制度が始まった八年前から、留学した生徒は一人もいません。志願した生徒は一人いたようですが、七年前に事故死しています」

「一人もいないだって?」

「はい。一人も。そして、あなたが当たり年を迎えた時の新聞。これらに、海外留学なんて言葉は一か所も載っていません。神稚児祭りの記事さえ、開催を伝えているだけです。本当に、あなたの同級生は留学しましたか?」

 答えられない。覚えていない。という、万能な言葉でさえ何かがおかしいと感じた。

「あ……?」

 俺は跨道の手から新聞をひったくり、目を走らせた。神稚児祭りや、神稚児が海外留学するなんて一大イベントがあったなら、学校新聞に当時の様子が書いてあるはずだ。

 だが、跨道が差し出した記事全てに目を通しても、それらしい記事は一つも見当たらなかった。彼が言った通り、海外留学の文字はどこにもなく、神稚児祭りに関する記事でさえ写真一枚なく、小さな物だった。跨道の身体が左右に揺れる。彼は微かに肩を震わせ、俺の手から新聞を掏り取った。

「海外の話が出てくるのは、あなたが小学校三年生の時。六月に、夏休み期間中だけのショートステイを募集した記録があります。疑うなら、校内新聞を読んでください」

 愕然とする。一体、当たり年に何が起っていたというのか、想像もつかない。ただ、胸の奥ではっきりとした焦燥感と、深い悲しみが渦巻いている。

 跨道は新聞を折り畳み、茶封筒に仕舞うと、両手を胸の前で重ねる。そして、神託を下す牧者か詐欺師のように、丁寧な口調で言った。

「確信しました。あなた達の記憶は操作されている。それも、真実を隠す方向へです」

 突拍子のない台詞に、俺は激昂する。だが、爆発する様に燃え上がった激情ほど長続きしない物だ。声は次第に萎れ、震えていく。

「んな訳あるか! だれがそんなことを、そんなことをして、一体何の得がある⁈ その神稚児だって、もしかしたら留学じゃなくて、転校したの、かもしれない……。家族みんなで引っ越した。はず、だ……」

 苦しい言い訳は曖昧に肯定される。

「引っ越しはしたけれど、その理由までは分かりません。留学か、転校か、それ以外か。いずれにしろ、それはこの子の家族に聞けば分かります。まだ時間に余裕はありますが、そこまで調べていては手遅れになる。網代さんが言った通り、この子の家族は村に住んでいませんから。見つけて話を聞くには、伝手がありません」

「そら見ろ。でたらめがバレそうになったから誤魔化したな」

「いいえ。家は空き家になっています。事実です。近所の人に聞きましたが、二十年以上も前に、遠方の家族に介護が必要になったから引っ越した。と、これについてはまあ、眉唾ですから、忘れてください。ただ、連絡先も教えてくれなかったそうです。管理は自治会と役所が行っているので、元の住人はどこそこへ行ったよ。携帯電話でいいなら連絡先を教えてやるよ。なんて、簡単に教えてくれるはずがない。論文の為には、神稚児の行方がどうなったのかまで調べなければいけません。ですが、神稚児に選ばれた後、生きている子はどこにいますか? 資料が乏しい以上、僕は皆さんの記憶に頼るしかないのに、記憶というのは曖昧で、とても頼りない」

 嫌な感覚だ。鍵に触れている手を、振り払ってしまいたい。だが、鍵を握っているのは俺じゃなく、隣にいる跨道だ。そしてその鍵は、俺の手に渡される。

「じゃあ、神稚児祭りは。神稚児はどこに……」

「七年前、行方不明になった子は水死体で見つかったそうですね。ここからは僕の邪推ですが、もし、望月教授が僕と同じ結論に達して、神稚児が儀式の前に海外留学は儀式の危険を隠すために使われた方便だと知ったとすれば。島に渡ったらどうなるのだろう。と、不安に感じたはずです。行動力のある子なら、隙を見て逃げ出そうとしたかもしれません。いえ、きっとこの子は脱走した。望月教授のノートに、それを窺わせる記述があります。しかし、島へ渡るのは夜ですから、うっかり足を滑らせて。という事故に繋がったとしても、おかしくはないでしょう」

「あんたは一体、儀式で何が起ると思っているんだ」

「分かりません。ただ、望月教授はヒキアシタヂカラヲノミコトを嫌悪と嘔吐感、その他あらゆる悪感情を抱かしめる神と表現していました。留学先は高い緊張状態から解放されたばかりで、いつまた同じような事態が起こるか分からないような場所が選ばれている。もしかしたら、島に渡る事自体が、神稚児にとって危険なことかもしれません」

 俺は跨道の推理を邪推だと笑うべく、質問を重ねる。

「行かなきゃ分からない、ってか。っけ、じゃあ他の子はどうなんだ? 祭りで島に行くのは神稚児と泡足だけじゃない。子ども達も一緒に行くんだぞ」

 跨道が頬を引きつらせた。

「他の子は僕にとって重要じゃありません。しかし、危険ということだけで考えれば、夜の海を渡って島に行く。それ自体がすでに危険行為です。漁師なら分かるでしょう? どうして放っているんですか」

 跨道の切り返しに、俺は噛み付く。

「生まれる前からずっと続いている神事を、危ないからやめようなんて言う馬鹿はいない。それに、危ないと分かっているからこそ対策が取れるんだよ。実際、四十年以上生きてきて、事故があったのは七年前が初めてだった。それまで、事故が起こった話は一度も聞いたことない」

 跨道が眉間に寄った皺を揉みほぐす。

「忘れないでください。僕は、あなたの記憶を信用していません。ただ、情報を整理すると、神稚児に危険が迫っているというのは明らかです。神稚児祭りが論文として公表できないような神事かもしれないという今の状況は、僕にとって不利だ。あなたも他人事ではなくなった以上、自分の記憶を疑って、事実だけを集める方がいい」

 脳の血管が膨らむ。瞬間、網に包まって海に浮かんだ子どもの死体と、華恵の笑顔が脳裏をよぎった。

「くそ、何がなんだか……! 畜生、とにかく、華恵を連れ出さないと……!」

 公民館に駆け戻ろうとした俺の腕を、跨道が引き留める。振り返った彼の表情は硬く強張り、大きく見開いた目は瞬き一つしなかった。

「網代さん。深呼吸をして。落ち着きましょう。見渡までまだ一日、島に渡るまでは一日半以上も時間があります。それだけあれば、泡足さんと穏便に話し合って、真実を確かめることが出来るかもしれません。今夜、会いに行きましょう」

「穏便に話し合う? 真実を確かめる? はっ! 御大層な事だ。自分の命より大切な娘が危ないって言うのに、そんな悠長にしていられるか!」

 俺は跨道の手を振り払って公民館に向き直ると、努めて平静を装い、踏み込んだ。

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