ペース

 オレは…カナヨをドキドキさせたいのに、なぜかドキドキさせられっぱなしだ。

 

 

 そもそも…

 

 そもそもが、カナヨがオレを好きじゃなかったら、ドキドキもあるわけないか。

 

 むしろひとつ間違えば、キモキモ案件だろう。

 

 危ないところだったぜ。

 

 

「ねぇ〜、さっきからなにぼーっとしちゃってるの?もしかして他の女のこと考えているんじゃないでしょうねぇ?この浮気者」

「浮気って…そもそもオレたち付き合ってないし。」

「なら、やっぱり…ほかの女のこと考えてた?」

「ううん。」

「じゃあ、わ♡た♡し?」

「え、…うん」

 

「はぁっ?こんなに近くにいるのに、このわたしのこと考えていたっていうの⁉︎どういうこと?」

「いや、それは…」

「…それは、もちろんかわいいなぁ♡って思ってたんでしょ?」

「まぁ…」

「えっ?マジなの?」

「うん、そうかも」

「は…は?え?…あのっ…」

 

 カナヨは、顔を赤くしてオロオロしだして、なんだか小動物みたいでとても可愛らしくみえた。

 

 

「カナヨちゃんは、かわいいでちゅよ〜。ほーらよちよち〜」

 と、頭をナデナデして差し上げた。

 

 冗談混じりなら、こんなことフツーにできるんだけどなぁ。

 

 いざとなると、緊張してダメダメなんだよなぁ。

 

 あ‼︎

 

 そうか‼︎

 

 これだ‼︎

 キモがられるの承知でせめてみるのも…アリかもな。

 

 逃げたら、終わりだ!

 

 

 ガチにならないで、冗談風味でいけばいいんだ‼︎

 

 

 好きをあしらった、イチャイチャふう攻め添えのコース。

 

 これだ‼︎

 

 

 カナヨを小動物と思えば、それはそれは可愛らしい。

 

 

「カナヨ、そろそろゲーム終わりにして勉強再開しよっか」

 

 オレの言葉に従うカナヨ。

 

 早速ゲームのお片付けが始まった。

 

 

「カナヨ、重いでしょ。オレも持つよ」

 オレは、ゲームを持ってあげるどころか、カナヨの手を持った。

 

「えっ…ちょっ…持つところ…違くない?」

「あぁ、そうだったね」

 

 ひょいっと、オレはカナヨを抱き上げた。

 

「キャ〜っ、間違えてるってばぁ。ゲーム、ゲームを持つんじゃんっ」

「あはは、うっかり間違えたわ。ごめん」

 って、カナヨを優しく座らせた。

 

 

「んもぅ、なんなのよぅ」

 カナヨは、突然のことにびっくりしたのか、顔を赤くして前髪を整えていた。

 

 

 かわよ。

 

 

 それから気を取り直して、お勉強が再開された。

 

 

「でね、ここがこうでここがこうなって、それから…」

 

 …

 

 ペシっ

 

 

 ⁉︎

 

 勉強を教えていたら…カナヨから、いきなり優しくお顔ペシっをくらいました。

 

「な、なんだよ」

「だって…なんでさっきからわたしの顔ばっかり見てるのよ…」

 

 またも照れているカナヨ。

 

「そりゃ、かわいいからに決まってんじゃん♡」

「は、はぁ?今日…なんか遼也ヘンだよ…まぁ、いつも変だけど…」

「たしかに。でも、カナヨってめっちゃかわいいよね〜。」

「えっと…だ、だからー…それやめてよー…調子狂うじゃない」

 

 

 でしょうねえ。

 

 いつもカナヨがオレをおちょくるから、オレはドギマギさせられっぱなしだったんだ。

 

 逆転してしまえば、こっちの勝ちなのさ。

 

 

 すっかりカナヨは、オレのペースにのせられて、戸惑いの嵐のようだった。

 

 

 照れているカナヨは、かわいい。というか、それはそれは可愛すぎて愛おしい。

 

 

「カナちゃん、わからないことがあったらなんでも(きいていいよ)♡」

 

 最後の、きいていいよ♡は、耳元でささやいてやった。

 

 

「ちょっ…くすぐったいし、そんなの…そんなの反則なんだからねっ」

「へぇー、そうなの?反則とかあるなんて知らなかったわ。ごめんね」

「う、うん。わかれば…いいの」

 

 カナヨは、自分がリードしていない時は、かわいい慌てっぷりで、ほんとみていて飽きない。

 

 

 このペースで続けていこうと、オレは企んでいる♡

 

 

 続く。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る