第4話 失われた記憶
「お父さま!私の記憶が消されているとは、どういう意味ですの!?」
床に落っことした通信型携帯端末で、通話を呼び出した私が次にした事は、月宮に居るお父さまへの追求だった。
「とうとう知られてしまったのだね」
対するお父さまの声は重くて静か、私に知られてしまった事が辛いというような声音で、しばらく黙ってしまった。
「風翔が酒場に情報収集に行った時に手に入れてくれた情報ですわ。信じられないけど本当なんですの?」
黙ってしまったお父さまに、更に真実を追求すると、お父さまの更に沈んだ声がようやく返ってきた。
「桜花。私はね、今までも、これからもキミを愛してる。それだけは覚えて居て欲しい」
「答えになっていませんが?」
「記憶を消した事は事実だが、なぜそうしたのかまでは言わない」
「なぜですの?!」
「それは………言いたくないけど、その記憶を辿ると言うなら、私には止められない」
それだけ言うと、お父さまは静かに通話を切ってしまった。私の失われた記憶を辿れば何か分かるのかも知れない。
ふっと視線を感じて振り返った先には、風翔の深緑の瞳が何か辛そうに私を見ていた。
「風翔、何か私にご用かしら?」
「はい。桜花さまを誘拐されてしまったら、大変ですので、替玉を用意しました」
先ほどの辛そうな視線から、まるでわざと切り替えたかのように、風翔が明るく言って手招きしているその先には………。
「…………」
振り返った先で思わず絶句する、私に良く似た少女が、不機嫌そうに立っていた長い黒髪にピンク色の濃い目のジレ、白い襟には桜の紋章、動きやすい用に茶色のショートパンツを履いて、足元は編み上げブーツを身に付けた真紅の瞳の………って真紅の瞳!?
「まさか……月華なの?」
「………はい」
不満そうな表情のまま、月華は頷いてみせた。
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