第3話 呪われた4人の姫
「4人の歌姫?」
「はい。1人は光宮界、1人は桜丘界【おうきゅうかい】1人は清宮界【せいきゅうかい】にそれぞれいらっしゃるそうです」
時刻は暁。酒場に情報収集に行っていた風翔の話を、私は欠伸混じりに聞いている。だってまだ5時前よ!乙女を起こす時間じゃないわ。
「1人足りないんじゃなくて?」
寝ぼけ眼でそう答えると、風翔は1度言いにくそうに唇を結んでから、深緑の瞳で私の薄いピンク色の瞳を捉えて言った。
「………最後の1人は翡翠国の姫で、記憶を消されているそうです」
「それって、まさか私の事!?」
驚いてお父さまから戴いた通信型携帯端末を落としそうになって、慌てていたら、横にいた氷月がすかさずソレをキャッチして私に返した。
「さっきから、何をなさってるのですか?」
「お父さまのナビキャラを作ってるのよ」
「ナビキャラ?ですか?」
「今ナビキャラを自分の好みに作り替えて、通信交換するのが流行っているの………ってそれは良いから!」
私は手の平サイズの通信型携帯端末を操作しながら、風翔に先を促す。なんだか、とんでもない事を聞かされそうだけど……。
「おっしゃる通りです。最後の1人は翡翠国に住んでいる姫、桜花さま、アナタです」
「やっぱり、私なのね……」
「更に重大な事が分かりました」
「続けてちょうだい」
記憶を消されているなんて、にわかには信じられないけど、あのお父さまなら、やりそうだわ。
「はい、実は桜花さまを誘拐しようと企てている輩が光宮界の華宮[はなみや]には居るそうです」
続いた風翔の耳打ちに、私は今度こそ通信型携帯端末を床に落っことした。
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