第9話 勇者なのに魔王にならなきゃいけないらしい
——剣と剣が激しくぶつかり合う。
火花が散り、衝撃波が周囲を震わせた。
「どうした、勇者よ! その程度か?」
私は笑みを浮かべ、リオを挑発する。
「ぐっ……!」
リオは聖剣を振り抜きながらも、どこか迷いが残っている。
「……お前を倒せば、俺が魔王になる……それで、本当にいいのか……?」
戦いの最中だというのに、まだそんなことを考えている。
私は一歩踏み込むと、リオの剣を弾いた。
「お前が決めることだろう?」
「……っ!」
リオはすぐに体勢を立て直す。
「覚悟も決められないまま戦うなら、さっさと斬られろ!」
私は一気に距離を詰め、渾身の一撃を繰り出す。
リオはそれを受け止めながらも、迷いを振り払うように叫んだ。
「そんな簡単に決められるわけないだろ!」
戦いの中で見えた答え
リオの剣撃が鋭さを増していく。
私の攻撃を防ぎながらも、彼の剣は確実に私を追い詰め始めていた。
(……いい顔になってきたじゃないか)
リオは戦いの中で、答えを見つけようとしている。
「魔王がいなくなれば、魔物はどうなる?」
私は戦いながら問いかける。
「……秩序を失う……暴走する……」
リオは苦しげに答える。
「そうだ。それに私の力は年々弱くなっている。まだなんとか統制を取れているが、いずれはまた無秩序な世界になって行くだろう。」
「だから定期的に勇者が討伐にくる。これは私への試練でもある。」
「そんな…!」
リオは歯を食いしばる。
「私だって、易々とやられてたまるかっ!」
私は剣を大きく振りかざした。
——そして、ついにその瞬間が訪れた。
リオの渾身の一撃が、私の剣を弾き飛ばした。
私は膝をつき、息を切らしながら笑う。
「……お前が、新たな魔王だ。」
リオは剣を握りしめたまま、静かに息を整える。
「俺は……本当に魔王になれるのか?」
私は微かに笑う。
「勇者が魔王になるのは……これが初めてじゃないさ。」
リオの目が驚きに揺れる。
「どういう意味だ?」
私はゆっくりと立ち上がり、肩を竦めた。
「私もかつて、勇者だった。」
驚愕に目を見開くリオに、私は続ける。
「魔王の力は年々弱まり、いずれ魔物を統制できなくなる。だから、定期的に勇者が試練として魔王と戦い、その座を受け継ぐ。それがこの世界の在り方なんだ。」
リオは息を呑み、剣を握りしめる。
「……そんなこと……誰も知らなかった……!」
「当然だ。知るのは魔王だけだからな。」
リオはしばしの沈黙の後、ゆっくりと剣を収めた。
そして覚悟を決めた。
「……俺が、魔王になる。」
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