第4話 魔王城防衛戦! 立ちはだかる獣戦士ゴルドス


 魔王城ダンジョン


そこは幾重もの防衛ラインが張り巡らされた、侵入者を阻む最後の砦だった。


 そして今、その静寂を破る足音が響き渡る。


「……来たか」


 魔王は玉座の間で魔力を巡らせ、ダンジョンの様子を見つめていた。


 勇者リオ。今代最強と名高い戦士。正義感に溢れた顔つきをしている。


 そして彼が今、魔王城の奥深くへと迫っていた。


第一防衛ライン:迷宮の間


「全軍、配置につけ!」


 魔族兵士たちが迷宮の間に展開し、勇者を迎え撃つ。通路は複雑に入り組み、侵入者を惑わせる仕掛けとなっている。さらに伏兵として、獣人部隊を率いるゴルドスが待機していた。


 だが――


「遅い。」


 勇者リオは迷いなく一直線に進んできた。まるで迷路の構造を見透かしているかのように。


「バカな……!」


 魔族兵が剣を構える間もなく、一閃。勇者の剣が煌めき、次の瞬間には数体の魔族兵が吹き飛ばされていた。


 伏兵のゴルドスが待機する暇もなく、第一防衛ラインは突破された。


第二防衛ライン:トラップ地帯


「これならどうだ!」


 ベルゼリアの魔法によって仕掛けられた転移の迷路が発動し、勇者の行く手を阻む。あるルートを進めば最初に戻され、あるルートでは爆破トラップが発動する。


 しかし――


「これも、見切れる。」


 勇者は軽やかに罠を回避し、転移魔法を逆手に取るように最適なルートを選択していた。爆破トラップも、あたかも知っていたかのように一歩手前で避けていく。


「な、なんだあの動きは!? 本当に人間か!?」


 ベルゼリアは戦慄した。ここまでの防衛をすべて突破されたのは初めてだった。


 そして、ついに勇者は第三防衛ラインへと到達する。


第三防衛ライン:召喚獣の間


 重厚な扉が開かれると、そこには魔獣たちが待ち構えていた。


 ベルゼリアが召喚した巨大な魔狼、炎を纏う獅子、無数の飛竜たち。


「今度こそ……!」


 ベルゼリアが号令をかけると、魔獣たちは一斉に襲い掛かる。


 だが、勇者リオは静かに剣を構え――


「……無駄だ。」


 一瞬にして視界が光に包まれる。眩い剣閃が奔り、次の瞬間、魔獣たちは全滅していた。


「嘘でしょ……」


 ベルゼリアの膝が震える。彼女の最強の召喚獣たちが、手も足も出ずに斬り伏せられたのだ。


 そして、ついに――


「ふん、ここまでやるとはな…!おもしろい!」


 獣戦士ゴルドスが、大剣を担いで勇者の前に立ちふさがる。彼の体は鋼のように鍛え上げられ、並の戦士ならばその気迫だけで動けなくなるほどだ。


 しかし、勇者リオはただ静かに剣を握り直すだけだった。


「来い。」


「後悔するでないぞ」


 ゴルドスが吼え、地を蹴る。瞬く間に間合いを詰め、大剣を振り下ろす。その破壊力は城の壁すら粉砕するほど。


 だが――


「遅い。」


 勇者は紙一重で回避し、逆にゴルドスの懐へと踏み込む。


「なに!?」


 ゴルドスの驚きの表情が固まる。勇者の剣が、彼の首筋に寸止めされていた。


「……嘘、だろ……?」


 それは敗北の予感。ゴルドスはこの一瞬で悟った。勇者は、自分よりもはるか格上の存在なのだと。




「ゴルドスが……押されている……?」

 魔王は玉座の間で、その光景を見ていた。そして、額に汗を滲ませる。


(こいつ……ヤバすぎる……!)


 勇者リオは、圧倒的だった。これまでの防衛を瞬く間に突破し、最強の獣戦士ゴルドスですら敵ではない。


 魔王は頭を抱えた。


「……どうすんだよ〜、これ……」


 戦う前から、心が折れかけていた。

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