第3話 時間稼ぎのためのダンジョン戦略


「よし、まずは落ち着こうか。」


俺は深呼吸し、できるだけ威厳を保とうとした。


戦うか、逃げるか、説得するか――


悩んだが、今すぐ勇者と真正面からぶつかるのは無謀すぎる。


幸いなことに、この魔王城はダンジョン構造になっているらしい。無数の通路や罠、強力な魔物が配置された迷宮。ならば、それを活用しない手はない。


「ゴルドス、迎撃の準備を頼む。」


「ハッ! ならば、俺の部隊を第一防衛線に配置しましょう!」


ゴルドスの目が輝く。どうやら、待ちに待った決戦に燃えているようだ。


「いや、真正面からぶつかるのは得策じゃない。」


「なんですと?」


「ここは、ダンジョンを最大限に活用し、勇者の進行を遅らせる。」


「……ほう?」


側近のベルゼリアが興味深げに俺を見つめる。

「つまり、トラップや地形を利用し、少しでも時間を稼ぐというわけですね?」


「そうだ。それに、ダンジョンを進ませることで、勇者の消耗を狙う。」


“時間を稼ぐ”――


それが今の俺にできる最善の策だ。


「……なるほど! さすが魔王様!」

ゴルドスが豪快に笑い、拳を鳴らした。


「だが、勇者の力を甘く見てはならんですぞ。アイツは単身で魔王城まで辿り着くほどの実力者。中途半端な策では、かえって足止めにならないかもしれませぬ。」


「フフ……そこはご安心を。」

ベルゼリアが妖艶な笑みを浮かべる。


「魔王様のご命令とあらば、最強の布陣で勇者を迎え撃ちましょう。」


「……頼んだ。」


こうして、魔王城のダンジョン戦略が動き出した。



「これで……少しは時間を稼げるはずだ。」


俺は玉座に座り、深いため息をついた。


正直、不安しかない。だが、この状況でできる最善策は打った。


あとは……勇者がどこまで突破してくるか、だ。


そして――ついに、勇者の侵入が始まる。

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