第2話 部下たちの期待が重すぎる


ドォォォン!!!


城門が吹き飛ぶ轟音が、玉座の間まで響き渡った。


魔族たちは動じるどころか、むしろ士気が高まったようだった。俺の周囲に控えていた部下たちが、一斉に拳を握りしめる。


「ついに来ましたか……!」


「ふっ、愚かな勇者め。我らが魔王様を相手に、勝てるとでも思っているのか?」


「ここで迎え撃ち、歴史に残る勝利を刻みましょう!」


部下たちが熱い視線を俺に向ける。


……おい、待て待て待て。


「魔王様、ご指示を!」


側近のベルゼリアが、真剣な眼差しで俺を見つめる。赤い瞳が期待に輝いている。


「作戦は?」


「そ、そうだな……」


作戦? 俺が決めるの?


いやいや、俺、戦ったことなんて一度もないんだけど!?


心臓がバクバクしている。手のひらには汗がにじむ。


「おいおい、どうした?」


巨体の獣人、ゴルドスが不思議そうに俺を見下ろした。


「まさか、魔王様……怖じ気づいたわけではありますまいな?」


「ま、まさか!」


勢いで否定したものの、内心では「完全に怖じ気づいてます!」と叫びたい。


「フッ……当然です。我らが魔王様が恐れるなどありえない!」


ゴルドスは満足げに頷き、周囲の魔族たちも誇らしげにうなずく。


「そ、そうだとも……!」


こうなったら、まずは時間を稼ぐしかない。


「しかし、焦るな。我らには策が必要だ」


「なるほど、さすが魔王様!」


「真正面から戦うのではなく、何か秘策をお持ちなのですね?」


「そ、そういうことだ!」


「魔王様は慎重に見えて、実は大胆な策略を張り巡らせるお方……!」


部下たちは勝手に感心し、納得し始めた。いや、そんなすごいこと考えてないけど!?


とにかく、この状況で最適な選択肢を考えなければ――


戦うか? 逃げるか? それとも、説得するか?


俺は未だにこの世界のルールも、魔法の使い方も分からない。だが、“魔王ルーゼス”としての能力は確かにある。


――問題は、俺がそれを使いこなせる自信がゼロだってことだ。


「……どうする?」


迫りくる勇者。部下たちの期待。


俺は、今後の運命を決める決断を迫られていた。

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