第8話 遊園地で見た意外な一面

 週末、俺は零士さんを誘って遊園地に出かけることにした。彼との関係が少しずつ深まってきた今、普段は見せない零士さんの意外な一面を知りたいと思ったからだ。


「遊園地か……なんだか久しぶりだな」


「意外だな、零士さんも遊園地に行くんだ」と、俺は笑いながら言った。


「まぁ、たまにはね」と、零士さんは軽く肩をすくめて答えたが、その表情には少し不安そうなところも見え隠れしていた。


 遊園地に到着すると、賑やかな音楽と人々の笑い声が響いていた。観覧車やジェットコースター、メリーゴーランドなどが並ぶ中で、俺は目を輝かせていると、零士さんが言った。


「どれから乗ろうか? 観覧車とか、いい景色が見られるよ」


「うーん……観覧車もいいけど、もっとアクションのあるものがいいな」と、俺は少し考えた後、ジェットコースターの方を指さした。

「ジェットコースターでもいい?」


「大丈夫だよ」と、零士さんは自信満々に答えたが、その目には微かな不安が見えた。


 俺たちはジェットコースターの列に並んだ。周りの人々は楽しそうに話し、乗り込む準備をしている。零士さんは少し顔を引き締めながら、目の前のジェットコースターを見つめていた。


「結構高いところまで行くんだよな、これ」と、少し冗談を言いながら、零士さんを見た。


「うん、大丈夫、大丈夫」と、零士さんは答えたが、どうもその表情にはあまり自信が感じられなかった。


 やがて、俺たちはジェットコースターに乗り込むことになった。席に座ると、シートベルトがしっかりと固定される。その時、零士さんが少し緊張した様子で手を握りしめているのを見て、思わず微笑んだ。


「零士さん、大丈夫? 怖かった?」と、やっぱり俺は少し心配になり言った。


「いや、平気だよ」と、零士さんは強がりながらも、少し顔を引きつらせて言った。


 ジェットコースターが動き始めると、急加速で一気に上に登っていった。その瞬間、零士さんの顔が一瞬で青ざめ、目を大きく見開いた。


「うわ、これ……思ったより高い!」


 零士さんの声が、普段の冷静な彼とは思えないほど高く震えていた。


「大丈夫?」


 俺はジェットコースターに誘ってしまったことを少し申し訳なく思っていたが、零士さんはすぐに振り返り、少し笑って言った。


「平気だってば。これはちょっと……予想以上だったけど、楽しんでるよ」


 その後、ジェットコースターは急降下を繰り返し、激しいカーブを抜けていく。零士さんは顔を引きつらせながらも、終始しっかりと座っていた。俺はそんな彼を見て、思わずクスクス笑ってしまった。


「ほら、怖がってるじゃん!」と、俺は零士さんをからかうように言った。


「だ、だって、これは……」と、零士さんは答えられず、ただ必死に前を見つめていた。


 最後の急降下が終わると、ようやくジェットコースターが止まった。零士さんは、震えながらも必死にシートから立ち上がり、「ああ、やっぱりダメだ、あれは……」と言いながら、手を頭にやった。


「ごめんね、勝手に決めちゃって」と、俺は申し訳なくなりそう言った。


「大丈夫……大丈夫だよ」と、零士さんは何とか平静を装って言ったが、顔はやっぱり少し赤くなっていた。


 その後、ベンチに座り少し休憩を取っていた。本気で怖がっていたのは申し訳なかったが、零士さんにも苦手なものがあることが面白くて仕方なかった。普段、冷静で頼りにしている零士さんが、こんなにも必死で怖がる姿は、どこか新鮮で、少し親しみを感じさせてくれた。


「次はどうする?」と、俺は笑いながら尋ねた。


「次は……もう少し穏やかなものにしよう」と、零士さんは声を震わせながら言った。


 その後、観覧車に乗り、静かな時間を過ごした。零士さんの意外な一面を見たことで、ますます彼に対する気持ちが深まった。


「今日は楽しかったね」と、遊園地を後にしながら俺は言った。


「うん、楽しかった」と、零士さんも笑顔で答えてくれた。


 普段は見せないような零士さんの意外な一面を見たことで、俺中で彼との距離はさらに縮まった気がした。そして、これからも一緒にいろんな場所に行って、もっと彼を知っていきたいという気持ちが強くなった。

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