第47話 報告
試験結果発表日。
先生が予告した通り、結果が掲示板に張り出された。掲示は学年ごとに順位が並んでいた。
二学年の一位。
もちろん私ではなかった。一位は鳳凰飛鳥だった。
私の順位はというと、遥か下の方。
上から数えたのを公開する順位。九十二位だった。
もしも他の教科もテストを受けれていれば、もう少し高い順位にいれたのかもしれないけれども。けど、最後まで粘っても一位には届かなかったと思う。学力なんて、やっぱりすぐには上がらない。上位陣は一学年の時と同じような、見慣れたメンバーが並んでいた。
一方、舞白はというと、総合結果では三十位程だった。ただ、教科別の順位では、受けたテストは全て一位を取っていた。こりゃあ、化け物だな……。
けど、結局、どの順位だろうとダメだ。一位では無かったのだ。
「ダメだったね……。私が一位を取るなんて、到底無理な話だったのかもだよね……」
舞白の方を向くと、いつもと変わらない明るい笑顔を見せてきた。
「お姉ちゃん。そんなことよりさ、今日は何して遊ぶ?」
「いや、舞白……。なんで、そんな楽しそうなの……?」
私の言葉を聞いていないのか、私の手を取って引いてくる。
「今遊んでおくしかないじゃんっ! 終わったことをくよくよしても時間の無駄だよ。残された時間、精一杯遊ぼうっ!」
舞白は、決意の籠った瞳をしていた。
これから、私たちがどうなるかっていう未来を想像した上で判断したのかもしれない。先のことなんて、わからないと言ってる私よりも、よほどしっかりしている。
それをわかったうえで、思い出を作るために遊ぼうって言ってるのだろう。
そこまで考えての行動。
私はその気持ちに応えようと舞白と精一杯遊ぶことにした。テストのことは忘れて。
舞白の親に報告するのは週末。
それまでの間、なにも出来ることなんて無いから。
◇
週末になると、私たちは舞白の家へと報告に向かった。
舞白の家に来るのは、二回目。
相変わらず大きい門が私たちを出迎えてくれた。
本当だったら、この場から逃げ出したい気持ちでいっぱいだよ……。どうしようもない不安が、私の心を満たしていた。私の気持ちと同じように、今にも雨が降りそうな空をしていた。
「お姉ちゃん? 緊張してる?」
「あ、当たり前じゃん……。これから、私たちの関係が無くなるかもなんだよ……?」
「大丈夫。なるようになるからさ。お姉ちゃんは、そんなに緊張することないよ!」
そう言って、舞白は私の手を握ってきた。
強気そうな口調なのに、舞白の手はプルプルと震えていた。
私たちは手を繋ぎながら門をくぐると、舞白の邸宅へと歩みを進めた。
屋敷へ入ると、前と同じ客間へと案内された。
私たちが、お父さんに大見得を切った部屋だ。
ここから始まった勉強生活も今日で終止符が打たれるのだ。私の学園生活も……。
「お姉ちゃんは、私の言うとおりにしてね。絶対に私がなんとかするから!」
舞白がそう宣言するとともに、お父さんが部屋に入ってきた。相変わらず表情がない。娘に対する態度じゃないんだよ……。舞白の震える手はおさまらないでいた。
「久しぶりだな、舞白。早速だが結論から聞かせてくれ」
お父さんが急いで結果を求めて来た。舞白が答える。
「私が三十二位、千鶴が九十二位です」
「なるほど。呆れるほどダメな結果だな。あれだけ言っておいて、なにも結果が残せていないんじゃないか?」
「はい。けれども、私たちは毎日毎日、ずっと勉強していました。確実に学力は向上しています」
お父さんは椅子に深く腰掛けて、首を捻って語りかけてくる。
「いつも言っている通り、結果が全てだ。責任を取ると言っていたが、どうするつもりだ?」
舞白は俯いて黙ってしまった。やっぱり、お父さんが怖いのだと思う。ずっとずっと緊張していたのは舞白の方。お父さんと対峙して、勢いよく説得しようとしていたけれども、出鼻をくじかれてしまっていた。
悪いのは私だ。
結果を残せなかった私が悪いんだ……。
舞白に黙っていろと言われたけれども、自然と声が出ていた。
「私が辞めれば解決ってことでしょ」
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