第48話 決別と新たな門出

 私が学校を辞める発言をすると、お父さんの動きが止まった。


 お父さんの気が変わる前に、条件を全て出してしまうのが良いはず。後手に回ったら、良いことなんてないから。私は間髪入れずに続ける。



「舞白に変な影響を与えてしまい、申し訳ございませんでした。私がいなくなれば、舞白は今まで通り成績優秀に戻ります。全て私がいけなかっ……」


「お、おい……っ! ク、クソ親父……!!」


 私が頭を下げて謝罪をしているのを遮って、舞白は暴言を吐き出した。



「お、お前、私が小さい頃に約束したこと、覚えてんだろうな……!?」


 舞白は震えながらも、反抗している。

 今にも涙が溢れそうな瞳をして、声を震わせながら反抗している。


「も、もしも好きな人ができたら、お父さんに教えるんだぞって。家に連れてきたら、お父さんがジャッジしてやるぞって」


「舞白。お前は、なんの話をしている? 今は成績の話を……」


 舞白はお父さんの遮る言葉も聞かずに続ける。


「たとえ、どんな人を好きになったとしても、ダメなことなんて一切ないぞって言ったよな……。頭が悪かろうが、性格が悪かろうが、お金があろうがなかろうが、好きになった人と一緒に入れる人生こそが最も素晴らしいって言ったよな?」


「……あぁ言ったな」



「それに、お父さんはどんな相手だろうと応援するって。だから今宣言するよ。ここに連れてきてるのが、私の好きな人ですっ!」


「その話は今は関係……」


 舞白は全く聞く耳を持たない。

 ずっとこのことを考えてきたのだろう。お父さんになんと言われようとも、絶対に自分の意見を変えないという強い意志を感じる。



「今まで頑張ってきたことと天秤にかけても、今までの努力をすべて捨てたとしても、私には大好きな人がいるの。私のフィアンセは、この白川千鶴さんっ! この人以上に、私を幸せにしてくれる人はいないし、今後絶対に現れない。千鶴が運命の人なんだよっ!」


 いきなりの舞白の宣言に対しても、お父さんは顔色を変えなかった。



「そうだとしても、この子は女の子じゃないのか?」


「だからなんだよっ! ク、クソ親父っ!! そんなの全く関係ないんだよ! 私は千鶴が好きなのっ! 大好きなのっ!!」



 お父さんは怯まず、淡々と続ける。


「女同士なんて世間体も厳しいだろうし、そもそも一度宣言したことも守れない人間なんかに未来はないぞ?」


「うっせぇよっ! クソ親父っ!! 私はずーーーっと千鶴の頑張る姿見てたんだよっ! それもわからない親父に言われる筋合いないよ! それに、今までずーーっと親父の言いつけ通り生きてきて。なんの楽しいこともなかったのに。千鶴と過ごしたこの一ヶ月ぐらい、私はすごく幸せだった。こんなこと、今までなかったの。絶対に私の気持ちが正しいの! 私は千鶴が大好きなの!!」


 大声で、涙声でお父さんに訴える舞白。

 もう、なにがあっても舞白の気持ちは変わらないのだろう。私は強く舞白の手を握った。

 舞白も「うん」と頷いてくれた。


「私は、この家を出て行く。舞白になる。なんて名字も、ここでもらった何もかも、全部全部返すっ! 幸せになるためには、そんなもんは一切いらないんだよっ!! 私は千鶴がいれば幸せになれるからっ!! じゃあな、クソ親父!!」


 そう言って、舞白は私の手を引いて走り出した。

 お父さんの反応はなにも聞かずに、部屋に置きざりにして。

 専属メイドさん達は、舞白と私に深々とお辞儀をしていた。



 ◇



 家の門を出るまで強気だった顔が、門を出ると急に崩れた。声を上げて泣きじゃくる舞白。


「舞白、破天荒だね」


 舞白を抱きしめる。

 小さい身体は、一生懸命に息を吸って震えていた。



「もう、これからどうしたらいいか、わかんないね!」


「ううん。後ろ盾も無くなって、お金もなくなっても、全然ダメな状況じゃないよ。愛がない方がダメな状況でしょ?」


「ふふ。愛はあるよ。今、また増えたかも」

「……うん」


 私の言葉に、舞白も少し泣き止んで笑い顔が見えた。



「今度は私が千鶴に勉強を教えてあげるから。今度こそ成績上げちゃおうよっ! 白百合学園って、『特待生制度』があるんだよ。それがあれば、学費が無くても学園に居続けられるんだよ」


 舞白の顔は、涙が晴れて明るく輝いて見えた。


「えっ? そんな制度あるの……?」


「そうだよ。お姉ちゃん貧乏なのに、リサーチ不足だなー? 二人で勉強して、その枠取りに行こう!」



「いやいや。それって、限られた枠じゃないの? そんなところに賭けるの……? もしもとれなかったら……」


「そしたら、二人合わせて退学しよっ! 取れたら、お姉ちゃんも含めて特待生制度ね!」


 明るく言っているけど、そんなに簡単なことじゃない。

 ……けど、舞白ならできそうな気がする。


 私も一緒にできちゃうんじゃないかって思わせてくれる。



「わかった。じゃあ、今度は私も本気見せるからっ!」


「うん! お願いします!」


 素直な妹の舞白。

 舞白に出会えて良かった。


 なんだか、舞白にあってから、ピンチな状況しかない気がするけど、それも含めて楽しい生活だ。


「舞白、こっち向いて?」

「ん?」


 私は、舞白の両頬を抑えてキスをする。

 柔らかいキス。


 舞白の家の門の前。

 防犯カメラで見られているのかもしれないけど、そうだとしたら見せつけてやろう。

 私と舞白は、こういう仲なんだぞって。


 私のキスに、舞白も答えてくれる。

 緊張でカサカサになったお互いの唇が段々と潤ってくるのを感じた。


 私たちの関係を確かめ合った。


「舞白、今度は、私から前払いだよっ。絶対に特待生の席とってね! 私、もっと舞白と一緒にいたいから!」


「うん。わかった。じゃあ、今日からまた、二人でお勉強しようね! 二人きりがやっぱり良いよ、その方が素直になれる気がする!」


 舞白は、離した唇を再度寄せてくる。


「お姉ちゃん、大好きだよ!」



 了



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【あとがき】


 最後まで、お付き合いいただきありがとございます。

 この物語はここで終了になります。


 応援の程ありがとうございました。


 3/31まで更新としていたのですが、コンテストが3/31 11:59までなので、急遽予定を変更して詰め込んでみています。

 まだまだ至らないところは多いと思いますが、楽しんで頂けましたら幸いです。


 今後も、色んなコンテストに参加したり、恋愛を書いたり、ラブコメを書いたりしていきます。

 どうぞ、作者ともどもよろしくお願いいたします。



 いやー、なにより。

 妹って、本当に良いですよね!( *´꒳`* )



 また、違う作品でお会いしましょう!

 以上、米太郎でした!( *ˊᵕˋ)ノ

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二人きりになるとデレる歳下の女子と同棲生活。 米太郎 @tahoshi

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