第6話「事件性皆無、烏合殺人」

しかして諸君

犯罪にかける思いは純情か?

はたまた語り部も

愛を知らずに育ったわけではない


ならば成しうるものは、晴れて発端の元帥ではないか

今宵の死は誰の為にあるか

その日々死にゆく数々の死を

誰がまともに取りつくろって

処分できるか


これは殺人に起因していない

それこそ最大の間違えではないか

言葉を並べているのは

作家だからではない、死者を弔うためだ、

故に殺人で会ったほうが、字的に芳しいのだ。


この数日、言葉を亡くしている

私は死者である鳥である、


ピザを食べた覚えもない、

なのに、鳥は死んだ、

まったく間違えも、あるからこそ

審議はいつだって誰のもとにも確たる姿を見せない、


ではその淡いこそが読者であり

その顛末を筆者が握るなら

この鳥殺人事件は、誰が主犯といえよう、


想像は未来であり、過去は未来を推測する道具

それを分かれば

事は易き、調べになるのではないか。


懸命なミステリアンならすでにご回答してるあたりだが

あえて、言おう、

これは独善的な詩的殺人であり、

これが最たる文献であるかは

いささか疑問ではなかろうか


そもそも鳥が死んだくらいで

まして卵を落としたことで

殺人事件など

甚だ、遺憾極まりない、議題の据え膳にも満ちない。


まったくこの作者いかれてる、

私は登場人物でありながら、5分前の議論をしてる

つまり未来仮説が予知であるなら、

文頭を筋立てる時点で、未来は5分以上続いている。


このアクリルの鉄格子がなんの意味があるかなど

いささか見聞録にも不備があるのではないか


ただ死を死と呼べば美しいだろうが、

死を殺人と呼べば、それは風変りして憎悪になる、

これが書き手一つで決まるのだ


どうだ、これはすなわちプロットであるなら

脚本さえ、ことの顛末を数十時間にわたって予知できる、

ではこれを神と呼べば、運命論、

噂の5分前仮説に異議を唱えるどころか、

完全なる未来を提供できるのではないか、


まったく遺憾である。


甚だ遺憾である。


読者を弄び、

事件を難攻させるなどいささか

文武ならぬ、邪道である。


まったく、江坂、君は何をしてる。


言葉は既に、己を捨てているぞ。


もう作者を救出するほか、事件は解決しない、

そもそも最後まで書けない未来仮説を

読者が推理するなら、これはシュレーディンガーの猫、である

多岐の時間複製になる。


まったく、これは骨が折れそうだ。

やってやろう、読者諸君、

人類は試される、

これはいい気味だと、笑ってくれ。


さてさて、頃合いだ、

現場に行こう。


もう事件性はないのだが、読者の怪訝な顔を見るに

推理する必要がありそうだ。


まったく、作家とは、

実にミステリーである。

これだけのお立合い、

これだけの節操で、


あなたはまた、飲まれていく。


どうだろう、今宵の文学に、言葉を数えるだけの作家の隣で


幾日付き合ってくれるだろうか。


まったく太宰もびっくりだな。


それではな、読むに耽る、ともがらよ。


すでにマニュアルは備えてある。

捜査開始だ。


行ってくる。

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