第2話 

 聡美は毎日が本当に退屈だった。


 来る日も来る日も、電車に揺られて職場へ行って。

 与えられた仕事を淡々とこなし、適当に周囲とコミュニケーションをとって—―


 やれ昨日のドラマがどうの。

 どこそこのランチはコスパ最高だの。


 さして興味のない話でも、「うんうん」「分かる分かる」と共感する。

 共感力の高さは女の方が上、というのは本当だろう。


 もちろん、共感出来ないことも多々ある。


 付き合った男が最低な奴だったとかで、マッチングアプリで他にイイ男がいないかと毎日のように物色している同僚に呆れたり、誰にでもいい顔する女が陰で陰湿な悪口を言っているのを聞いて吐き気がしたり……


 波風立てないように生きていくのが一番賢い――と思っている聡美は、そういう人間に対しては何も言わず適度に距離をとっていた。



 仕事も人間関係も。

 深く突っ込まず、表面をサラリと撫でていくだけ。


 それなりのトラブルはあるが、人生が激変するような変化とは言えず、毎日がただなんとなく過ぎていく。

 こんな風に、自分は年を取っていくのかと思うと、


(私って、なんのために生きてるの?)


 と疑問が湧いてくる。



 聡美はそろそろ28になる。

 付き合っている男はいない。

 数年前に別れて以来、ずっと一人だった。

 別にモテないわけじゃないが、自分に声を掛けてくる男のほとんどが、結婚を意識していると分かり、どうしても尻込みしてしまう。


 まぁ。年齢を考えれば至極当然のような気もするが、聡美は結婚に対して躊躇してしまうのだ。


 自分は結婚してはいけない。

 ましてや子供など、絶対に作ってはいけない――



 それは、ある瞬間から聡美を支配して、ずっと呪縛のように自分を縛り付けている理性の鎖だ。



(私は子供を産んではいけない。産めばきっと、――)

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