第一章 君がそこに居たから




あの時の僕は、全てが嫌で、どうしようもなくて、明日、死んでも構わない…そう思っていた。




僕の父は、とある会社の社長、母は、社長夫人で専業主婦。

専業主婦と言っても、家には、家事を全て行う使用人がいて、母は、何もする事がなく、毎日、芝居や映画、食事に出掛けていた。


『いいな、金持ちの息子は』


みんな、そう言って羨ましそうに、僕を見る。

だから、何だって言うのだろう?


お金があると言っても、それは両親のもので、僕のものじゃない。

欲しいものは、何もかも手に入る。

お金さえ、払えば、家だって買える。


だけど、それが何だって言うのだろう?

そんなものじゃない、僕が欲しいものは。


友達だって、僕にチヤホヤしてくれるさ。

だって、僕と親しくしていたら、損をする事はないから。


そんなんじゃない。


そんなんじゃないんだ。


本当の友達って、そうじゃないだろ?


僕が欲しいのは、高価な物でも、偽りだけの友情や、そんなものじゃなくて。


僕が本当に求めて、欲しいものは……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君がいた日々 深夜 幻夢 @kotakami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る