第2話③ 成長中

現在、冒険者のゴイデさん、赤い髪色だが歳をとっているのだろう、白髪が少々見える、だがその体躯はオジサンというより歴戦の猛者といった感じ。


そのゴイデさんと森に向かっている。

そこで色々話を聞いた

ここ周辺の森は比較的弱い部類の種が多いなのだとか、そもそも人が暮らせるような場所はそういった所に住む傾向にあるらしい。


とは言ってもここの近くに洞窟型ダンジョンがあると言う、そのダンジョンは現在この街の冒険者ギルドの本部がその上に建てられていてとても厳重に管理されているとのこと。

ダンジョンにはギルドがあるので、その周辺の森は結構安全だそうで、今回はそちらの方に行くことに

だがその道中、とても身に覚えのある通路を進むことになり少々冷や汗をかいていた


そこは石ころ一つない綺麗な道が広がっていた、しかし柵を跨げば森ほどでもないが木々が生い茂っている。

そう、ここはファストが街に行くときに通る道だった。

このままだと家の人に見つかる可能性がある


「おじさんこっちの林の方で歩こうよ、森もこんな感じでしょ?慣れるためにさ!」

「ガハハ!面白いこと言うな、まぁ確かにいきなり森に行くよりいいか!」


ホっとしつつ林に向かって歩き出す、見慣れている光景であるはずの景色は、落ち着いて見渡すことで姿を変えていた。木々から漏れ出てくる日の光がとても綺麗にあたりを照らしている。

…今まで僕は何を見てきたのだろう?、ふと思った。僕は今まで夢や前世の事で頭が一杯で自分の目の前の事、周りの事、現状、あれ?もしかし自分の顔すら見たことない?

5歳まで自分は何をして生きてきたんだ?


なんとなく生きてきた気がする、色々考え事しながら歩いていたら目の前にある木にすら気づかなくなっていた

当たる寸前で視界ががくんと高くなる


「坊主、ちゃんと前を向きな、ここは安全なエリアで小さな林だったとしても怪我や迷子にならない。なんてことはならないんだぞ、目の前のことに集中しろ」

「あ、はい。ありがとうございます」

「ふっそれで?どうしたんだいきなり考え込んで」

「それが、僕何回かここに来ていたはずなのにこんなに綺麗な場所だなんて思ったことなくて・・・今まで何をしていたんだろう?って思っちゃって」


今日合ったばかりの人に何を言っているんだろう?そうは思うが自分より長く生きている大人に聞くのが早いと考え素直に聞いてみた


「な~んだ坊主おめぇさては6歳になってないな?ガハハ!」

「6歳?6歳になったら何かあるんですか?」

「この国の習慣、とでも言うのかな。ま、これは俺から言う話ではないから、楽しみにしたいならそれまで待っとけ、濁した答えを聞きたいなら親にでも聞いてみな!」


と何とも煮え切らい返答が帰ってきた、そういえば兄ちゃんもそんなことを言っていたな。―なぜ危ないのかは最低でも6歳までファスト自身で考えろ―そう言われたのだ、6歳に何があるんだこの国には・・・ま、その時になればわかるか

少し楽観的なファストはそれで終わった。


「それにしても5歳で回りが見えるようになるのは早いな!ガハハ!」

「そうなの?僕は少し後悔してますよ」

「そうかそうか、君は後悔するタイプか、一つ面白い話をしてやろう」


そういうゴイデさんは上機嫌そうに話す、この世界には大体3種類ぐらいいると

1つは自分の視野の狭さに気づき後悔する者

2つは視野の狭さに気づけたのなら今後の頑張ろうと思う者

3つは無関心な者

その中で自分も僕と同じ1つ目の「後悔する者」であったと語った


「でな?俺の親父にそのことを話したんだ、なぜ気づかなかったんだ気づけたらよかったのにってな?そしたらよ!」

その声色や表情は懐かしい混じりのうれしい顔でとても穏やかだ

『今気づけて良かったじゃねぇか、これからがお前の新たな出発点だ、これからお前は今の事を思い出せる、その思い出した時そして忘れた時、今のお前の後悔が助けてくれる!』


素直で素敵な語りかけだな、ゴイデさんは父に似て素直でいい人なんだなっと率直に思った。

「ガハハ、なんて臭い言葉言うんだぜ、良くガキ相手だったとしてもそんなこと言えるなって思うぜ!」

「僕はとても素敵だと思います。」


ゴイデさんはニッと笑い、なら俺の親父の言葉を胸に生きな!、ガハハ!と上機嫌だ

今度はゴイデさんの話とお父さんの話をしながら歩いた

と、規定で一度ギルドで一緒に挨拶をしなくてはならないと言うので入ることに。


ギギギっと重そうな両扉を開き中に入る。ゴイデさんに気づいた冒険者の数人がこちらにやってくる。

「よ!今日も慈善事業かゴイデさん!」

「また頼まれたの?すごいね」

「私もそんなに頼られたいものだ」


そんな3人がゴイデさんに話しかけてきて、軽く話しをしていた。

とそこで初めにゴイデさんに話しかけた、金髪ので白を基調とした上品な姿のお兄さんが屈み、目線をを僕の視線の高さまで下げて

「こんにちは、俺はオシロイ、オシロって呼んでくれ!」

「こ、こんにちは僕はファストよろしくお願いします!」


「わ~すごいしっかりした子!、かわいい!!」

そういう彼女は、ネリネさんと言うらしい金髪で髪が腰辺りまであるすごく品のある綺麗なお姉さんだ。

最後に黒色の髪で清潔な見た目なおじさん、目は明るく、力強さを感じる男性がルドーだよろしくな坊やと声をかけてくれる。

皆とても優しそうな人たち。


そんなちょっとした団欒を繰り広げていたところにファストの視界にある人物の姿が見えた。そうお姉ちゃんのウィーリア姿だ。

え!?なんでこんなところにいるんだ!?

お姉ちゃんはまだこちらに気づいていない様子で友達なのだろうか、その子と談笑していた。


ゴイデさんは視線に気づいてニヤっと笑う

「あのお嬢さんが気になるか?」

「あ、え、えぇそうですね」

「ガハハ!見る目があるな坊主あの子はまだ幼いのにFランクの冒険者さ」

「!?」

「ガハハ!すげぇ驚いてんな!」


そりゃあ驚く。自分の姉が冒険者なら上級者や中級者と言われるようなところにと同じようなランク帯にいるのだから。

「本当にすごいよね、あの子、ギルドに入ってまだ2年ぐらいしかたってないのよ」

ネリネさんは感心したようにそう告げる


と話をしていくうちに見つかる可能性が高くなる。見つかったら何を言われるかわからない

「ねぇ、そういえばゴイデさん、ギルドに挨拶はこれで終わりなの?」

「あ、いっけね忘れてたぜ、じゃあお前らついてくるのは好きにしていいが書類は忘れるなよ」

「はいよー」

「はーい」

「じゃあ私も行くとするか」


と、ギルドの受付に行けば名前と年齢を書いて保護者の名前を書いて終わった。

「じゃ、行くか!」

「はい!お願いします!」


と、ギルドを出たタイミングでギルドの方が一瞬騒がしくなっていたが気づかず森へ向かった。


数刻のち森に入れば今まで感じていた空気感が変わる、威圧感と言えばいいのかなんだか重い感じがする。

「よし、一応大丈夫だとは思うが、気を引き締めろよ子供には絶対に怪我はさせちゃだめだ」

皆一様に首肯する。


「坊主、どうだ初めての森の感想は」

「なんていうか重い空気を感じる?っていうんですかね圧を感じる気がします」

「いい感性を持ってるな、その感性は大事にしろそれはまだお前自身には早いって証拠だからな、ま、今回はちょっとだけ散歩させてやるよ」


森にはいろんな生命の息吹を肌で感じることができた。それに色とりどりの植物、木などを見ることができた。改めて自分の視野の狭さを感じる。

一つ疑問に思ったことがある、圧は常に感じるのだが魔物などが一切出てこないことだ


聞いてみたところ、ゴイデさんたち一行の強さを察して威圧だけかけているのだそう。

「ちなみに魔物ってどこにでもいるんですか?」

「あぁ居るぞ、世界中どこにでもな」

「ならなぜ人の街には出てこないのでしょう」

「それは街の周辺を城壁で囲って、更に兵士によって見回りをしているから――


ガサガサ

音と同時に酷い獣臭に包まれる、木々の奥から、牙の大きな豚が姿を現す。

「フガフガ」


「ほー坊や下がってな?あれはグラントゥース・ボア、ただのでけぇイノシシ、だが一発一発の攻撃は大きい」

言われた通り下がり見守る

「オシロ、前に出てあいつを連れてこい、ネリネは坊主を見守れ、ルドーは俺のそばに!」

「「はい」」


そこからは見事な連携だった。

オシロイさんがグラントゥースを煽り立てゴイデさんの所までおびき寄せる、そこでゴイデさんはその突進してくるグラントゥースを盾で受け動きを止める、その後は後ろに控えていたルドーさんがどこから出したのか、刃が顔の2倍ほどある大きい斧を振り、首を切り落とす。


この一瞬の出来事に反応もできず沈むグラントゥースの姿があった。

「ふふふ、驚いてる、すごいでしょ?」

「はい!すごいです!」


本当にすごかった、綺麗とすら思った。

これが熟練冒険者か、しかしこのレベルでも最上位じゃないってどういうことなんだ?

「ネリネさんたちは熟練の冒険者だと思うんですが、ランクは最上位じゃないんですよね?」

「そうよ、まだ3つぐらいは上があるかしら?」

「最上位ランクまで行くとどうなるのでしょうか?」


少し顔を上に傾けニコっと笑う

「面白い事聞くね、私が見たAランクの方は、あのグラントゥースが5体いても一人でどうにかなるような人達かしら?」

「へー!すごい!」


そこからはゴイデさん4人の冒険者の武勇伝を聞きながら帰った。

ギルドに戻って帰りましたの報告をした、そこでゴイデさん一行に感謝を伝え帰ろうとギルドのドアを開こうと手を伸ばしたら後ろから声がかかった。それは身に覚えのある声だった


「ねぇ、そこの坊や?お帰りなの?」

冷や汗が出てきた、ギギギっと古い扉を開くときになるような音で後ろを振り向く。

引き攣った笑顔で「こんにちはFランクのお姉さん」


アハハ!!っと笑った、その時ゴイデさんが割って入ってくれた。

「こんにちはウィーリア様」

「あらゴイデさん、こんにちは、いつも言ってるけど様はいらないよ?」

「こちらの坊主に何か用ですかい?」

「えぇ用事があるのそこの坊やに」


ニヤっと笑いこちらを見る。

僕は視線を逸らし遠くを見つめる

「それはどんな御用で、荒事はだめですぞ」

「あぁ、別に荒事なんてしませんよ?まぁなんて言ったらいいかな?ん~まぁいいかゴイデさんだし、ちょっと耳を貸して?」


何か耳打ちをし始めた二人、何を聞いたのかゴイデさんがすごい驚いた表情をして「本当ですか!?」と少し大きな声が出た、ウィーリアはしー!っと人差し指を口と鼻にあてゴイデさんを落ち着かせてからまた軽く耳打ちをした。

「じゃそういうことだからゴイデさん大丈夫、この子と一緒に帰るだけだから」

「は、はぁこれは失礼しました」


「さ、帰るよファスト」

「はぃぃ」

ゴイデさんは少し気まずそうな引き攣った笑顔で見送った。


怒られると思い、外に出た瞬間に「ごめん!」と謝った。

するとお姉ちゃんは微笑む

「あはは大丈夫、今日は森に行ったんでしょ?ゴイデさんたちと、一人で行ってたんなら起こったけど大人の人を頼ったのなら怒らないよ」

そういいながら頭を優しく撫でてくれる。


「今日は楽しかった?」

「うん!」

その日はお姉ちゃんと手をつないで家に帰った。

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