第1話赤ちゃん時代
やややや。とことこ歩き回る赤ん坊がいます
何を思ったのか、物を拾い上げ振り回す赤ちゃん、そばにいた侍女さんが少々困ったような顔
「ファスト様!振り回すのは危ないですよ〜それもらいますね。」
「あぅ」
とても不服そうな顔を向けるその子に少々疲れ気味の侍女さん、今さっきあかちゃんから取り上げた物を届かないような所にしまい、視線を元に戻すとそこにいたはずの赤ちゃんがが消えているじゃありませんか、その事に気がついた侍女さんの表情はみるみるうちに青ざめます
「ファスト様がいない!?」
その赤ちゃん、ファストの名前を何度も呼び机の下から部屋のいたる所に目を向け探し回る
ファストの姿が見えない事に焦りの表情が・・・
くーすぴー
普段おもちゃを収納しているスペースにファストは眠こけていた
___
「ゾシモス先生!起きてください!」
騒がしい。気持ちよく寝ていたと言うのになんだ?
ちらっとあたりを見渡せばそこに一番弟子が興奮しているのか満面の笑みで呼んでいた
「どうした?くだらん話ならゆるさんぞ」
寝起きはいつも気分が悪い、それを理解していない弟子でもないからぶっきらぼうに話を促す
「先生の魔術理論で人の手を使わずに魔法行使できました!」
「ほう、やっとか...!」
この世界では魔法の概念があり人や魔物が魔法を行使する事は可能だが人間は魔物と比べ生命力が低いため鉱石を用い、魔法を行使してきたが鉱石だけでの魔法行使は長年できなかった。
しかしそれができるようになったのだ。
「やはりあの理論は正しかったか?」
「えぇ、作成が少々大変な所はありますが理論通り成功です。」
_______
お目々をこすりなんかよくわからない夢を見た赤ちゃんはきょとんと目をぱちくりさせています
「あぅ?」
もぞもぞ、もぞもぞ・・・下半身に違和感があるのでしょう、自分じゃ何もできないことを悟ったファストくんは徐々に涙目、あらあら大変!侍女さんはどこかしら?
「うぎゃああああ」
「はーいファスト様少々お待ち下さいね〜」
小走りに走る少年がそこにはいた、少し悩んでいそうな面持ち
ある部屋へ移動していた少年は目的地に付き落ち着いてノックをする、そこで「どうぞ」声が聞こえゆっくりと扉を開ける
「兄ちゃん、今時間ある?あれ、姉ちゃんもいる」
「よ、ファストどうした時間なら今あるぞ」
「ファーちゃんじゃ〜んどしたの〜」
自分には兄弟がいる。それは7歳上の兄ヨハン、整えられた髪からは清潔感や好青年のような印象を受けわからないことは大体この兄に聞いている
それに9歳上の姉ウィーリア、母方譲りの茶色掛かった髪色に立ち姿は凛としていて強気女性の鏡のようなかっこいい姉ちゃん、弟もいるが今はいないので後で紹介する事にする
自分の中でとても大切に思っている兄弟の二人だ。姉ちゃんがいた事には驚いたがもはやちょうどいい
実の所赤ちゃんの頃から記憶がほとんど残っていて僕は赤ちゃんの頃から現在4歳まで度々見ていた夢(きっと前世的なやつなのだろう)を相談しようと訪れていた
「ファストは前世持ちなのか?!」
「ヨハン落ち着いて、ファーちゃんそれは本当?」
「うん・・・え?そんなにやばいことなの?」
二人が向き合って少し相談している、なんだか大事になってきたのかもしれないと思い少し焦るが姉ちゃんが落ち着いてこちらに顔を向け真剣な表情
「夢の話じゃなくて前世の話だと思ったのはなんで?」
「う〜んなんていうんだろう、夢にしてはねなんか変なふわふわした感じじゃないの!」
「そうなんだ〜もしかしたら本当に前世かもね?」
姉ちゃんは少し安心したような表情になった
なにかあったのかと聞こうと思ったら兄ちゃんが椅子に座るのを促しながら「それで?その前世がどうした?」と聞いてくれた。
「あ!そう!みんなもそういうの見るのかな?って思って」
あーと呟く二人がニコっと笑い元気に言う
「「見ない!」」
「でも安心しろ、世の中にはそういうやつはいるんだファストだけじゃないからな!」
「そうね、むしろ私はちょっと羨ましいかも〜」
その元気に話す様子に僕はとても安心する。
「しかし、それが前世だったとしたらファストの前世は誰だったんだ?」
「あ、気になる」
「えーっとね、周りからはゾシモス先生とか言われてたかな」
ゾシモスと語った途端二人がまるで石にでもなったかのように固まる。
「ちょ、ちょっと待って欲しい」
「ファストがあのゾシモスの生まれ変わり・・・?」
「え?誰か知ってるの!!!」
僕としてはゾシモスとやらの知識を全く持っていないから驚きも無ければむしろわからん人の記憶が流れてくるのに少々恐怖していた、それを知れるチャンスが舞い込んできた
「誰なの!?教えて!!」
これはまた困った顔になった二人。
今度は相談せずに姉ちゃんが真剣な表情で答える
「その人は今だと大賢者と言われる、今の魔術、魔法理論の基礎を作ったすごい人だよ」
「わー!すごい人!やった〜!」
素直に嬉しい、なんだかよくわからない人ではなくすごい人であるならば自分もそう慣れるかもしれない!
「なぁ、ファスト水を差すようで悪いがこれは俺達だけの秘密にしてくれないか?」
なんで?と聞いてみたが兄ちゃんはシワのできた眉間に指を当てていた
「そうだな・・・それがわからないのが一番危険なんだよ、でもそんな事言ったって納得はしないよな?」
神妙な表情で語るので少し気圧されるが納得しないのは本当なので首肯する
「一つはファストの身が危ない可能性がある、しかしなぜ危ないのかは最低でも6歳までファスト自身で考えろ、それでもわからないなら俺に聞きに来い丁寧に教えてやる、ただ安心しろ俺はファストの味方だ」
「たち、だよ私も味方だから安心してね!」
二人は優しく僕の頭を撫でる、腑には落ちないけど少なくとも人に聞いてばかりはいられないのかもしれない自分で考えることが必要な時なのかもしれない
「わかった・・・じゃあ他の誰にも言わない!6歳なったら自分で話すか決める!!」
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