第15話 依頼初達成と換金

嫌なことは後回しにする性格だ。その結果何が起こるのかといえば常時デバフの嵐、そうしていずれ死ぬ。それもどん底で、今俺はその底へと落ちている最中なのかなどと考えていると




(マスター着きましたよ。冒険者ギルドです。)




(あぁ)




(何を思い出しておられたのですか?)




(嫌なことから逃げ続けた先に何があるのかということだよ)




(あぁ、なるほどです)




(でもしっかりしてくださいよ。一つ一つこなしていきましょう。私も手伝いますから。)




(あぁ)そう気の抜けた返事をする。あぁ本当に気が重い先のことを考えると…




受付に行きスラリンから得た魔石をだす。それらを確認すると




「スラリン3匹討伐の依頼達成ですね。報酬はこの魔石を換金するのが通例なのですがどうしますか?」




「3つで銅貨15枚になります」




「いや、やめとくよ」そう言いギルドを出ていく。




(マスター、換金はよかったのですか?)




(まさか、銅貨15枚にしかならないとは思っていなかった。)




(それでもいいじゃないですが最低限一日生活はできると思いますよ)




(まぁそうだな)




(でもなんで売らなかったんですか?)




(そうだなー自分でも不思議だが日銭よりも思い出を大事にしたからじゃあないかな)




(思い出ですか、不思議ですね)




本当に自分でも不思議だ。大した思い出でもない、自分の力で倒せたわけでもない。それなら銅貨にしたほうがよっぽど価値がある。だけどあの時確かに銅貨となんの意味もないこの石ころを比べて僕は選んだんだ。




そうして帰路に着く。もちろんノワールの屋敷への帰路だ。しかし不思議と来た時よりも稽古への決心は固まっていた。嫌ではある逃げられるものなら避けられるものならそうしたい。しかしわずかではあるがそうでない選択への猶予が見いだされたのも事実である。それがたとえ100の事象のうち1度しかおきないことであっても。

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