第14話 屋敷での出来事(朝)
「はぁ」背伸びとともに少年は起きた。
(おはようございます。マスター)
おもいのほかぐっすり眠れはしたが起きてすぐに話しかけられるとつらいものがあるな。頭の中だとなおさらだ。
(聞こえていますよ。マスター)
(私の存在は秘匿されているんですから、直接声を出すわけにもいかないでしょう。それにそうお命じになられたのはマスターでしょう)
まぁそれはそうなのだが
(わかりました。次回からできる限りつらくないようにさせていただきます。これでいいですか?)
なにを怒っているのだろうか寝ぼけ眼の頭では到底解決できそうもない案件だ。
起きたはいいもののまだ眠いので気持ちのいい二度寝の旅路へと向かおうとしたところでそれは妨げられる。
部屋のドアがバタンと勢いよく開き団長が入ってくる。
「ノア!起きているか」
ビクンとはね起き上がる。
「だんちょおーじゃないですか。あさはやくからどぉうしたんですか?」かろうじて話せてはいるがうまくろれつが回らない。
団長は寝癖をみて気づいたのかそれとも他の要因でなのかわからないが昨日風呂に入ってないことを看破していた。
「どうやら無理やり目を覚まさせてしまったようだな。すまない、昨日は大浴場に行っていないようだがひとっぷろ浴びてきたらどうだ。目が覚めるぞ」
二度寝しちゃいたいのは当然そうなのだが頭のどこかではそれじゃだめだとおもっているのが原因なのかそれともノワールが起こしに来たのがなのかそれともその両方なのか起きることにしたのである。
その様子を見てかどうやら団長が大浴場まで案内してくれるらしい。
ふらふらと左右に揺れる。ときおり壁にもたれかかり再び歩き出す。ねむい、やはり二度寝が正解だったのだろうか。そんなことを思っていた。
団長はときおり後ろを振り返りながら大浴場への案内をする。その理由は言うまでもなく気づいたら壁にもたれかかっておりそのまま床に倒れたかと思うとまた立ち上がりふらふらとついてくる一種の奇行を目撃したからに他ならない。眠りたいのかお風呂に入りたいのかどちらかわからない。そんなに眠たいなら無理することもないのにとそう純粋に思うのだが彼の返答は違っていた。
「おい大丈夫か、お前また床に倒れていたぞ。」そう言い団長はもう少年が倒れる姿を見ていられなかったのか少年に肩を貸す。
「そうですか、自分でも寝てたのか起きていたのかわからなくて」
「そんなに眠いなら寝てもいいんだぞ」
「いえ、お風呂に入ればすっきりすると思うんです」
「そうか、ならちゃんと歩かないとな」
そうして団長に肩を借りながら大浴場へと向かう。
途中で夢の世界へと旅立ってしまいなかば引きずら気味だったこともあったが着々と大浴場へ近づいている。
「なぁこのままじゃあ、私が一緒にお風呂まで入ってやらないといけなくなるな」と団長が冗談交じりに言った一言で完全に目が覚めるのだった。
「はっ、いえ、もう起きました。すいません、ここまで迷惑かけてしまって。」
「別に遠慮することはないぞ、眠いだろう。それに水場で寝てしまっては危ないぞ。」
冗談でいっているのか本気で言っているのかがわからないが本気だった場合がとても怖いので精一杯遠慮することを伝える。
もう起きたので大丈夫だということを大浴場に着くまで伝えられる限りで伝えた。それが功を奏してか何事も提案されることはなく事は進んだ。最悪返答がなければ浴場へ入るや寝ていると思ったら入るや30分後とかやっぱり心配だから入ってきたなどとそういう最悪の事態も想定してはいたのだがこのままいけば何ごともないだろう。
「では入ってきます」
「何かわからないことがあったらいってくれ、ここにいるから」
「えっわるいですよ、そんな」
「さきほどの惨状を見せられたら心配でな」
それを言われてしまってはさすがにはねのけることはできず苦笑いしかできない。それを受け入れることしかできなかった。
途中何度か団長からの生存確認があったがゆっくりとお湯につかることができさっぱりとした。
体をふき頭をふきそこであれがないことに気が付く
ドライヤーがないのだ
そのことをいうわけにもいかず仕方なくタオルでできるだけ水気をふき取ると大浴場を出た。
出ると団長が待っており髪に水分が残っていることに気が付く。そこではたと気が付いたかのように言葉を発した。
「すまない、ドライヤーの準備を忘れていたな。」
いつもは自室でやるし母上などはメイドにしてもらっているのだから忘れていた。
「せっかくだから私が乾かしてやろう」そういわれ促されるまま椅子に座り髪を乾かされる。
「どうだ、気持ちいいか。」
「はいさっぱりしました。このドライヤーというのいいですね。」
などとくだらない雑談をしつつ髪を乾かされおわると団長が話しかけてくる。
「これからどうするんだ?」
「そうですね、今日は昨日受けた依頼の完了報告でもしに行こうと思います」
「そうか、気を付けてな。それと今日も泊まるといい」
「考えておきます。」そうとだけ伝えると部屋に戻る。
出発の準備を整え部屋を出るとまたも団長に遭遇する。
「もう出発するのか?」
「はい、部屋にいてもだらだらするだけですし」
「なら朝食でも一緒にどうだ一人で食べるより二人で食べるほうがおいしいだろう。」そう言われ案内されるが正直分からない。誰かと食べてよりおいしかった記憶などない、いままで一人で過ごす時間があまりにも長すぎた。家族と食べてでさえそこにあったのはただ食事をする他者と自分というそれのみであった。おいしいものを食べるとおいしい、しかしおいしくないものでも誰かと家族と笑いあって食べられたのならおいしく感じられるのだろうか。そんな想定をすること自体無駄かそう思い思案するのをやめた。
豪華な朝食というのを想像してみてほしいその10倍は豪華であった。もちろんおいしかったがやはり僕には誰かと食べることの楽しさはいまだ分からないらしい。
朝食を食べ終わったのを確認してか団長が話しかけてくる。
「短剣を使うのだな」
腰に差しているのをみたのだろう
「そうですね、重い剣には振り回されてしまうので…」
「どうだ、稽古でもしてみないか」
「みたところきちんと剣を習ったことはないだろう。」
すぐさま考える返答をではない、どうすればこの事態を回避できるのかということについてだ。
この事態は剣を見られた時からいやこの屋敷につれられたときから想定してはいた。いはしたがそう思っていたからこそ早くこの屋敷を出たかったのだが、さてどうしよういろいろまずい事態である。いままではなんとかごまかせてきはしたが早く逃げなければ疑惑が確定してしまう。俺だって逆の立場ならたしかに怪しいと思うさ、しかしここまで介入されるのは予想外の出来事だ。この世界のことを知る前に大胆な行動をしたのも事実だ。慎重さに欠いていた。しかしだそれをせかしたのも俺じゃあない
(私たちとでもいいたいんですか?マスター)
(そもそもですよ、マスター!マスターが楽をしようとせず地道にやっていれば避けられた事態でもあるんですよ)
(いや、それは)
(なんですか、私たちがマスターの怠ける手伝いをすればうまくいったとでも)
(そんなことは、かんがえていなぃ…)
いないといえば嘘になる。俺の想像通りに事が運んでいればこのような事態にはなっていない。それも俺の思うように…いや彼らは十分頑張ってくれてはいたか未熟なのはおれか、この事態を本当には避けようとは思っていなかった。避けることに全力ではいなかった。
ひとしきりの後悔と反省を手短に済ませると最悪の事態への対処も視野に入れつつこう返答するのだった。
「はい、ありません」
その後の返答はよく覚えていない。というか思い出したくない。
そうして俺は団長との稽古が決定してしまったのである。
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