第6話

抜けるような青空が、王都スタルボルグの上に広がっていた。

石畳の街並みを照らす真夏の陽光は、ぎらぎらとした熱を帯びる事はなく、高地にある首都特有の乾いた風が心地よく肌を撫でていく。

屋上の石造りの手すりに肘をつくと、ひんやりとした感触が腕から伝わってきた。

空の青さはどこまでも深く、まるで私の瑠璃色の瞳をそのまま空に映したようだった。


「壮観だな」


思わず独り言が漏れる。

眼下に広がる王都の景色は、私のお気に入りのひとつだった。


王宮へと続く大通りは色とりどりの旗や花で飾られ、黒山の人だかりで埋め尽くされている。

市民たちの熱狂的な歓声が、風に乗ってここまで届いてきた。

その視線の先、王宮の正門から今日の主役である第二王妃ヘンリエッタ様の一行がゆっくりと姿を現す。


その壮麗な一団の先頭でひときわ目を引くのは、純白の軍服を身にまとった我が姉上、イングリッド・ハイザだ。


陽光を吸い込んで濡れたように輝く漆黒の毛並みを持つ青毛の重種馬にまたがるその姿は、まるで古い叙事詩から抜け出した英雄のように見える。


あの馬は間違いなく、我がハイザ家の生産牧場で育てられた最高傑作の一頭だ。

引き締まった四肢、力強く盛り上がった背の筋肉、そして何よりも、その賢さを物語る大きな瞳。

王国の威信をかけて磨かれた白銀の馬鎧をまとっていても、動きは一切鈍らない。

姉上の意のままに、誇らしげに蹄を打ち鳴らす姿は騎手と馬とが完全に一体となっている証だった。


姉上に付き従うのは、腹心中の腹心たる「四天王」。

彼女たちの騎乗する馬もまた、姉上と同じくハイザ家が誇る血統だ。


それに続く連隊長直属の特殊遊撃部隊の精鋭たちが乗るのは、おそらくランガー子爵領で生産された中間種馬だろう。


だが、そのどれもが王国の厳しい基準をクリアした、まさに「最高傑作」と呼ぶにふさわしい馬たちだ。


さすがは第二王妃の御幸。


供回りの馬一頭に至るまで、一切の妥協が許されていない。

その威容ある騎馬隊が護衛する中心に鎮座しているのが、見事に揃えられた八頭の芦毛が引く、黄金と黒檀で絢爛豪華に装飾された一台の馬車だった。


一頭一頭が、寸分の狂いもなく同じ背丈、同じ歩調で進む様は、まさに馬政庁の練達の技の結晶である。

滑らかな毛並みは絹のように輝き、力強い脚さばきは重い儀典用の馬車をまるで木の葉のように軽々と牽引している。


あの中に、ユサール王国の三人の統治者の一人、第二王妃ヘンリエッタ・ペトロネラ様がいらっしゃるのだ。


「あれが、第二王妃ヘンリエッタ・ペトロネラ様。噂には伺っておりましたが、大変な威厳でございますね」


ふと隣から聞こえた声に、私は視線を動かさずに頷いた。

いつの間にか、副官のヨレンタ・カレンタが隣に立っていた。

彼女の声には、珍しくわずかな好奇の色がにじんでいる。


「貴殿も間近で見るのは初めてか」

「ええ。あまり表にお出になる方ではありませんから。我々のような庶民にとっては雲の上の、遠いお方ですよ」


ヨレンタの言葉に、私は内心で同意した。

確かにヘンリエッタ様は、三人の王妃の中でもとりわけ謎多き人物として知られている。

公の場に姿を見せる事は少なく、その素顔を知る者はごくわずかだ。


「私ですら、直接お会いした事はない。謁見の機会もなかったからな」

「意外ですね。ハイザ家とペトロネラ家は懇意にしているとばかり思っておりましたから、てっきり面識がおありなのだと」


その指摘に、私は何とも言えない、ばつの悪い表情を浮かべるしかなかった。

ヨレンタの言う通り、ハイザ家とペトロネラ家は、軍事という一点において深く結びついている。


だが、それはあくまで「家と家」の関係の話だ。


ハイザ家の者たちがペトロネラ家の方々と親しく交流しているという噂は、確かに聞き及んでいる。

けれど、私自身はそういった貴族の社交場、夜会とか茶会といった類を徹底して避けてきた。

そもそも、「王妃」という言葉の響きから連想されるものと、その実態とはかなりかけ離れている。


私たち、翼紋章を持つ紋章人には、不老の王が存在する。

王はその紋章の力をもって、我々紋章人の頂点に君臨しその存在そのものが我々の存続の礎となっている。


なぜそうなのか、詳しい理屈は私には分からない。


だが王が亡くなれば、その紋章を持つ民もまた、ゆるやかに滅びへと向かっていく。

これはこの大陸の長い歴史のなかで、いくつもの国が証明してきた覆しようのない事実だ。


幸いにも、我らがユサール王国の王、カイト・ムラカミは存命とされている。

でなければ、今こうして私たちが生きているはずがないのだから。

ただ、そのカイト王はもう千年もの間、王宮の奥深くにその姿をお隠しになっている。

王宮にいらっしゃるという噂だけが流れ、その姿を実際に見た者は三人の王妃を除いて誰もいない。


ユサール王国には、第一王妃、第二王妃、第三王妃という三人の王妃がいる。

王が統治の表舞台から退かれた今、彼女たちはカイト王から政務を委任された、実質的な国家元首として君臨している。


その数字は、王の寵愛の序列を表すものではなく、それぞれの担う役割に応じた職名だ。

そして王妃は、王の手で選ばれるわけではない。

七つの有力貴族からなる「選妃侯」によって、それぞれの役職にふさわしいと判断された人物が選出される。


第一王妃リリヤ様は主に内政と経済を、

第三王妃である我が姉上アストリッドは外交を、

そして今日の主役である第二王妃ヘンリエッタ様は軍事を、それぞれ統括している。


そして、我がハイザ家が圧倒的な影響力を持つのが、まさにその軍事の分野だ。

王国軍の最高意思決定機関「軍事参議院」では、母上や祖母上が重鎮として頂点に近い位置に君臨している。

だからこそ、ヨレンタが「ハイザ家とペトロネラ家は懇意だ」と思い込むのも無理はない。


にもかかわらず、長女であるアストリッド姉上が軍事を担う第二王妃ではなく、外交を司る第三王妃となっている。

この事実は、我がハイザ家がこの国でいかに強大な影響力を持っているかを示す、何よりの証だろう。


王妃は家を継ぐ事ができない。

いずれソルトラン公爵の座を継ぐのは、次女のイングリッド姉上だ。


では、三女である私は、どうすればいいのか。

長姉アストリッドは、その知性と社交性で外交を任されるに至った。

次姉イングリッドは、先日の手合わせで私に見せつけたとおりその武において常軌を逸している。


母上もまた、王国最強と謳われた生ける伝説だ。

彼女たちは、いわば「怪物」だ。


それに比べて私はどうだ。

知力ではアストリッド姉上に遠く及ばず、武力ではイングリッド姉上の足元にも及ばない。

母や姉たちのような怪物には、どうしたってなれそうにない。

私が姉たちに唯一勝っているものがあるとすれば、それはこの美貌くらいのものだろう。


いっその事、競馬の騎手にでもなってしまおうか。

あれなら、馬を乗りこなす実力と、観客を魅了する容姿が求められる。

私にぴったりの職業じゃないか。


けれど、そんな逃げ道が許されるはずもない。


結局、私に残された道はあの軍事参議院の椅子に座り、祖母や母、姉たちが歩んだ道を追う事だけなのだろう。

机に山と積まれた書類とにらめっこしながら、息の詰まるような政治的駆け引きに明け暮れる日々。

考えただけで、気が滅入ってくる。


「引きこもりには難しい道のりですね」


思考の海に沈んでいた私に、ヨレンタが静かに声をかけてきた。


「人の心を読むな」

「貴女は、面白いほど分かりやすいですから」


忌々しいが、彼女の言う通りだった。

私はため息をついた。


「貴殿にまで私の考えている事が分かるというのなら、やはり私に政治は向いていないのだろう。前線で剣や槍を振るっている方が、よほど性に合っているというのに」


私にとって、戦場こそが呼吸のできる唯一の場所だ。

なのに運命は、私をそこから引き離そうとする。


「ユサール古語に、『ノブレス・オブリージュ』というものがあるそうですよ」

「なんだ、それは?」

「現代の言葉で『高貴なる者の義務』という意味だとか。地位や富、権力を持つ者は、それに見合った社会的責任を、好むと好まざるとに関わらず果たすべきだという理念だそうです」


高貴なる者の義務、か。


その言葉の重みに、私は内心でうんざりした。

そんなものは、生まれた時から嫌というほど聞かされてきた。

ハイザ家の娘として、公爵家の人間として、常に民の模範であれと。


眼下では、第二王妃の馬車がゆっくりと大通りを進んでいく。

その前を馬に乗り先導するイングリッド姉上と四天王の姿は、ひときわ民衆の目を引いている。

市民たちの割れんばかりの歓声が、再び私たちのいる屋上まで届いた。


「それにしても、ずいぶんと盛大な見送りですね」


ヨレンタが、どこか訝しむような声で言った。


「そうか?姉上は私に次いで顔がいいし、四天王という分かりやすい存在もあって、市民には絶大な人気があるからな。時折開かれるパレードでも、いつも先頭に立って民衆の前に姿を見せる。ヘンリエッタ様には申し訳ないが、あの歓声のほとんどは姉上に向けられたものだろう」

「そういう事ではなくて」


ヨレンタは、心底呆れたというように、小さく首を振った。


「ん?」

「第二王妃は、ご自身の故郷であるステインヴィーク侯爵領へ帰郷されるだけでしょう?いささか、妙に仰々しいとは思いませんか。一人の王妃が領地に戻るというだけで、これほど盛大な式典を開いて見送るなんて。まるで戦勝パレードのようです。少し、変じゃありませんか?」


ヨレンタの指摘に、私は改めて眼下の光景を見つめ直した。

言われてみれば、確かにその通りかもしれない。

沿道を埋め尽くす市民の数も、飾り付けの豪華さも、近衛兵の動員数も、通常の王族の地方視察とは規模が違う。


「確かに、あまり前例を聞いた事はないが・・・・。まぁ、第一王妃のリリヤ様は滅多に王宮を出られないし、アストリッド姉上も元来、派手な事を嫌うお方だ。

それこそ、貴殿の嫌うところの古風で貴族的な慣習に基づけば、むしろリリヤ様とアストリッド姉上が例外で、これくらいが普通なのではないか?」

「だと、いいのですが」


ヨレンタは、まだ納得しきれない様子で唇を尖らせた。

彼女のそういう勘は、時として驚くほど的中する。

その鋭さこそが、副官としての彼女をこれほどまでに有能たらしめている所以だ。


「政治的な思惑をあれこれ推察したところで、私たちにはあまり関係のない事だろう?」


私がそう言って話を打ち切ろうとすると、ヨレンタは食い下がった。


「貴女の立場は、政治的に極めて重要ですよ。忘れないでいただきたい。

特に、この時期の急な人事異動で、貴女は中隊長になっている。そして、今度の大規模な演習。何かあると思いませんか?」

「だとしても、私たちに直接関係のある事ではないだろう」

「楽観的すぎます。貴女が政治に巻き込まれるという事は、私も否応なく巻き込まれるんですよ。

貴族の動乱に、庶民の私が振り回されるのは決して気分のいいものではありません」


彼女の口調は、いつになく真剣だった。

ハイザ家の三女である私が政治闘争の中心に引きずり出されれば、その副官である彼女も無関係ではいられない。

その事を、彼女は誰よりも理解しているのだ。


「何かあったら頼りにしているよ、ヨレンタ」

「何かあってからでは遅いんです。それに、それこそ私はただの庶民です。何かあったところで、何も手は打てません。それは貴族様のお役目でしょう?」


「それこそ、そんな頭もコネも私にはないさ」

「だから困っているんですよ。あのソルトラン公爵家の三女が、頭もコネもないなんて、この国の誰も信じませんよ。改めて申し上げますが、貴女の母上はソルトラン公爵なのですよ?一諸侯でありながら、王国軍と比肩するほどの私兵を保有し、国政にすら絶大な影響力を持つ。長女は第三王妃、次女は第一連隊の連隊長。もう少し、ご自身の立場というものを重く受け止めてみてはいかがです?」


「貴殿は私の舅か小舅なのか?」


ネチネチと続く彼女の説教に、私はうんざりして言い返した。


「まさか。ただの心配性な部下ですよ。これでも貴女の将来を案じているんですよ」

「なら、余計なお世話だ」


「余計なお世話ついでに申し上げますが、ハイザ家のご令嬢ともなれば、家のための結婚は避けられません。有力な家の息子を婿に迎え、他家との繋がりを強める。そして、ハイザ家の血を残す世継ぎを産む。それら全てが貴女の『義務』であり、逃れる事のできない『政治』ですから」

「あーあーあーあー、聞きたくない。まったく、侍女長と同じ事を言うんじゃない」


私の子供じみた反発を見て、ヨレンタはふっと息を吐いた。

その溜息には、呆れとほんの少しの同情が混じっているように感じられた。


「そのように、すぐにむくれるところとか、ご自身の立場への無頓着さとか・・・。貴女は確かに顔はいいですけど、その性格では結婚は難しそうですね」

「貴殿のそのねちっこさも、婿に来てくれる男はいなさそうだぞ」


「私は別に結婚したいとは思いませんから、構いませんよ」

「私だってそうだ。結婚は人生の墓場とも言うじゃないか」


「そのように自由に生きたいと仰いますが、そろそろ本格的に縁談の話が舞い込んでくる頃合いじゃありませんか?」

「実は、もう来ている。婿の一人や二人とれと、それこそ貴殿にそっくりな侍女長に口うるさく言われているところだ」


私の告白に、ヨレンタは意外そうな顔をしながらもどこか楽しげに目を輝かせた。

ゴシップ好きの庶民根性が、顔を覗かせている。


「ほう。それは羨ましい事で」

「本気で言っているのか?私はまだ十七だぞ?」


「ええ。十七で貴族の美男子を婿に迎えられるなんて、誰もが羨む話ですよ。それに、天下のハイザ家のご令嬢ともなれば、婿の一人や二人、どうという事はないでしょう?」

「やめてくれ。複数の男を侍らせるなんて、他の貴族の女たちを見ているだけでも恐ろしくなる。正夫の座を巡って、男たちが陰で醜く争うんだぞ?」


「それは歌劇の見過ぎでは?」


「貴殿は北方生まれのくせに、ウールフスホルト女爵の話を知らないのか?」

「ああ、男好きで有名な方でしたね。その好色ぶりは、兵舎の隅々にまで噂が届いております」


「十人も夫を囲って、その夫たちが正夫の座を争い、ついに去年は逮捕者まで出したんだぞ?側で見ていて、見るに堪えないよ」

「あれは、ウールフスホルト女爵が男たちを争わせてそれを楽しんでいたせいでしょう。そ れ で、肝心のお相手はどなたなんです?」


私は観念して、重い口を開いた。


「はぁ・・・、マグヌス・ロースルンドだそうだ」


その名を聞いた瞬間、ヨレンタの目が大きく見開かれた。

普段は感情を表に出さない彼女にしては、珍しい反応だった。


「あの、マグヌス・ロースルンド!?最近、王都で一番人気の歌劇歌手じゃないですか!それはすごい。彼の公演のチケットは、貴族でも手に入らないって言われているんですよ」


「もちろん知っている。歌は確かに見事だし、顔も、まあ・・・、美男子の部類だろう。だが、あの男はいつも男同士の悲恋劇ばかりではないか。そんな者が女に興味を持つとは思えん。それに仮に興味があったとしても、私は悲恋などごめんだ」

「劇は劇ですよ。去年だって、あのレイフ・マリアンズがノルザンガルズル伯爵のご息女と結婚したって話題になったじゃないですか」


レイフ・マリアンズといえば、同性愛の歌劇で主に“受け”として絶大な人気を博した役者だ。

二人の結婚が発表された際には、ファンの女性たちが“解釈違い”だと訴えて劇場に押しかけ、スタルボルグ首都警備隊が出動するほどの騒ぎになったと聞く。


「だが、それがどうしたというのだ。縁談など考えるだけで面倒だ。私は男の世話より、馬の世話の方がよほど性に合っている」

「なんとも、羨ましいお悩みで」


彼女の言葉には、本心からの羨望がこもっていた。


「なら譲ってやるぞ、この縁談」

「結構です。私にそんな有名な歌劇歌手を養えるほどの稼ぎはありませんので」


「私の副官なのに、そんなに給金が安いのか?」

「庶民にしては破格の額をいただいております。ですが、所詮は庶民ですから」


「悪い事を聞いたか?」


「いえ。嫌味な言い方をしましたが、今の生活には満足していますよ。ノブレス・オブリージュ、ですからね」


「高貴なる者の義務、か」


「ええ。大金を稼いで重い責任を背負わされるより、責任や義務なく自由に生きたいですから」


その言葉は、まるで鋭い矢のように私の胸に突き刺さった。

彼女が手に入れた「自由」は、私が喉から手が出るほど欲しいものだった。


「私もそうありたいね」

「そのお悩みを続けるにしても、さしあたっては目の前の火事を消してからにしてはいかがです?」


ヨレンタはそう言って、いたずらっぽく笑いながら一枚の羊皮紙を私に手渡した。


「火事?何の事だ?」


ざらりとしたその感触が、これから起こるであろう面倒事を予感させる。

それは、食堂長からの怒りに満ちた苦情申し立てだった。


「どうやら、アラウネ小隊長がアニカ小隊長にまたしても突っかかったようです。ですが、アニカ小隊長はいつものように綺麗にそれを無視。それに腹を立てたアラウネ小隊長が、今度は食堂で大暴れした、と。テーブルをひっくり返し、食器を割り、挙句の果てには調理用の大鍋に槍を突き立てたそうです」


私は手渡された苦情申し立てに目を通し、そのあまりの内容に深々とため息をつき頭を抱えた。


「貴殿は一体何を言ってるんだ?」


思わず声が漏れる。


「何があったら鍋に槍を突き立てる事になるんだ?」


先日の模擬戦で完膚なきまでに叩きのめした事で、あの猪も少しは大人しくなったと思っていた。

だが、その有り余るエネルギーは、また別の、そしてより厄介な形で噴出してしまったらしい。


私が新たな頭痛の種にうんざりし、こめかみを押さえている間にも時間は無情に過ぎていく。

ふと顔を上げれば、あれほど賑やかだった大通りはいつもの静けさを取り戻し、第二王妃の一行を乗せた馬車はとうに王都の街並みの向こうへと消えていた。


まったく、王妃の見送りという厳かな儀式の余韻に浸る間もなく、これだ。

私の頭の中は、これからどうやってあの猪を躾け直すか、そして食堂長にどう詫びを入れるかという、あまりにも現実的で、うんざりするような問題でいっぱいだった。

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