第50話

「実はさ、探してたの、昨日。咲弥のこと。」

 月野は、屋上に入って開口一番にそう言った。

「・・・・・・は?」

 意図がわからないその言葉に、顔が歪んでいくのが分かる。

 月野は同級生で、俺ほどではないけれど、それほど目立っている奴だ。美人なのに口が悪いとか、一匹狼だとか、なんとか。噂は俺も聞いたことがある。

 そんな月野は一昨日、ここにやって来た。その日は、ほとんど何も言わずにしばらく過ごして、帰って行った。

「嫌なことがあって。心地いい場所にいたくて。咲弥がいるかな、って思って。けど、さすがに朝にはいなかったね。」

「・・・・・・あっそ。」

 そっけない態度を取って、視線を逸らすと月野は笑った。

 ここが心地いいのか。俺と同じだ。

「咲弥は嫌?もしかして、一人でいたい感じ?なら、あたし戻るからさ。それだけ教えて。」

「・・・・・・別に。誰がいようが関係ない。」

 屋上に来て俺がいることを知った奴は、もうここには来ない。特別望んだわけじゃないけれど、俺は独りだ。

「なら、しばらくいさせて。」

「好きにしろ。」

 そう言うと、月野は人一人分離れて、俺の隣にやって来る。ぼろい柵に背を預けて目を閉じた。絵になる、と思った。

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