第46話

「・・・・・・は?」

 見たことのある顔で、眉間にしわが寄る。相手も、あたしのことを知っているのか、少し顔をしかめた。

「川田、涼?」

「・・・・・・月野さん、でしたっけ?」

「そう、だけど・・・・・・。」

 いつもすました顔して、学年主席とか生徒会とか。すごいことしてるのに、いつも同じような顔をしている彼は、どうやら虫と犬とお化けが怖いらしい。

「助けてくれたことは感謝してます。」

「うん。」

「けど、そろそろ授業が始まります。早急に、教室へ向かってください。」

「・・・・・・あんたは?」

「僕は用事があったので。近道しようとしましたが、慣れないことをするべきではないですね。」

 きりっとした表情とかちっとした喋り方がさっきとは違いすぎて、笑えてくる。

「で?あんまり言わない方がいいの?あんたが虫と犬とお化けが嫌いなこと。」

「別に、言いふらしていただいてもかまいませんよ。」

 意外な回答に「え。」と声が漏れる。こういうのって、男ほど一生懸命阻止するんじゃないの?いつの日か興味本位で読んだ少女漫画にそんなこと書いてた気がするんだけど。

「だって、誰にでも好き嫌いはあるでしょう。隠したいこと、と思われがちかもしれませんが、僕は誰にバレたって恥ずかしくないです。だって、本当嫌いですから。」

 「失礼します。ありがとうございました。」と丁寧に頭を下げてから川田がどこかに行く。

 変な人だ。ビビリなのか。教師陣も真面目な生徒達も憧れる彼は、ビビリなんだ。そう考えるとなんだか面白くて、しばらくあたしは一人で笑っていた。

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