第33話

「ねえ、バイトしたいんだけど。」

「なんでだ?」

「美容代ぐらい、自分で稼ぎたいし。」

「そんなの、俺に払わせろよ。それぐらいしかできないんだからさあ。」

 分厚いのに形は綺麗な唇を尖らせるとーさんは正直、気持ち悪い。

「五十一歳がすることじゃないし、それ。」

「ははっ、とりあえず、心配する必要はないし、真衣は黙って甘えてくれたらいいんだよ。じゃあ、行ってくる。」

「・・・・・・行ってらっしゃい。」

 どたどたと足音を立てて、とーさんが家を出て行く。ばたんとドアが閉まったのを確認してもう一度鏡の中の自分を確認する。

 傷んでも明るい茶髪。今日のピアスはシンプルなゴールドのもの。制服は少しだけ着崩す。寒いから、スカートは折らずにタイツを履いてる。

 真っ赤な唇と、きらきらのアイシャドウ。少し多めに乗せたのに、派手に見えないのは、とーさん譲りの濃い顔立ちだからだと思う。

「・・・・・・うん、大丈夫。月野真衣になれてる。」

 綺麗な顔立ちをしているのに、毒舌。一匹狼。もったいない美女。

 それが、みんなが描く月野真衣だ。

 本当のあたしがそうじゃないとしても、こんなキャラを作り上げることができたんだから、満足。

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