第15話

「おねえちゃん!」

 しばらくして、どたどたと音がしたと思えば、バンと部屋の扉が開いた。ため息が漏れそうだ。懸命にこらえながら、どれだけ頑張っても好きになれない子に笑いかける。

「ねえ、みて!おけしょう、してみたの!おかあさんがしていいよ、って!」

 ニーッと笑うこの子に、また心臓が苦しくなった。

 私にも、この子みたいに世の中がキラキラして見える時期があった。オシャレに興味を持って、お母さんに頼んでメイクしてみたいと言った。けれど、お母さんは「だめ。嫌。」の一点張りだった。

 私はダメなのに、この子はいいんだ。

 なに、それ。

「うん、似合ってる。素敵だね。」

 私はうまく笑えているだろうか。この子も笑っているから、大丈夫。大丈夫だから、笑っておく。

「莉理。お姉ちゃん、勉強しないといけないから。お父さんと遊んできたら?」

「いやだ。おねえちゃん、あそぼ!」

 心臓が黒さを増したのが分かった。ワガママを言って、それでも愛されているのなんて羨ましい。私は、頑張らないと、二百パーセントで頑張らないと、見てもらえなかったのに。ワガママなんて言いたくても言えなかったのに。

「うーん、けど、お姉ちゃん、勉強が―――」

「おねえちゃんのいじわる!おかあさんにいうから!」

 部屋を飛び出して、またどたどたと音がする。どうして、あの人もあの子も、私の心を壊すんだろう。もうとっくに壊れてるのに。誰にも気づかれずに、崩れているのに。どうして、まだ壊そうとするの。

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