第11話
時計の針が六を回った頃、職員室でパンをかじっていた担任に日誌を提出した。「どうして、きみが?」とがさがさの声でそう言われたけれど、「彼女、今日忙しかったみたいで。預かっていたんです、こんな時間になってしまったのは数学の勉強に没頭していて。」なんて言えば、分かりやすく頬を緩ませた。数学の勉強、と言ったのは彼が数学教師だから。
学校を出て、家までの道を歩く。家から学校までは十五分。近いと交通費はいらないし、学力も無理な範囲じゃなかった。逆に、レベルを下げたぐらい。行きたい高校はあった。けど、高校受験で大事な時に二人がやって来た。心がぐらぐらして、揺れに揺れて。賢いことで有名な高校に憧れていたけれど、妥協してしまった。そのことに、後悔はしていない。おかげで、お母さんはあの子のお迎えの時、私を必要としてくれるから。
「ってか、日直ってほんと、めんどー。」
「ははっ、委員長に押し付けてたくせに。」
そんな会話が後ろから聞こえても、立ち止まらないし、振り返らない。今日、日誌を渡してきたクラスメイトは少しサボり癖があって、先生によく注意されている。バイトしてるなんて聞いたことがないし、そういうことだろうなとは思った。
楽しそうな会話を聞きながら、角を曲がった。そこで、少し立ち止まって、ため息を漏らす。
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