第9話

「ごめんね、田中さん!じゃあ、日誌書くのよろしく!」

「大丈夫ですよ。あ、気を付けてくださいね。」

 バタバタと足音を立ててクラスメイトが帰っていく。私のクラスでは、日直は日誌を書いたり黒板けしをしたりする。けれど、日直の子が日誌を書き忘れていたことに先ほど気が付いたらしい。それに加え、バイトがあるんだとか。困っている様子だったので、私が声をかけた。

 この学校は、体育祭も文化祭も一学期に行われる。二学期は学校全体が参加する行事はないから、バイトを詰めている子が多い。バイトは禁止じゃないし、部活や委員会に所属することも絶対じゃないから、こういうことはたまにある。

 少しボーッとしていたら、もう教室は私だけになっていた。今日は、あの子の迎えに行かなくていい。たしか、あの人がお迎えの担当だったから、帰りたくない。日誌を任されたのは好都合だったかもしれない。

 七時半が完全下校時刻。今は四時半。しばらく、何も考えずにボーッとしておこう。こんな時でも、私の口角は上がっている。

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