知らない会議

stdn0316

第1話

「Aさん、議事録送っておきましたんで後で見てください」

 後輩のBから声をかけられた。


「ありがとう、ごめん、何の議事録だっけ?」

「昨日の戦略会議に決まってるじゃないですか、Aさんメインで進めてましたよね。とりあえず昨日の話と齟齬とかあったら教えてください」


 全く身に覚えのない会議の議事録に首を傾げながら目を通した。

 内容は、月次で行われる課の営業戦略会議のものであった。


 売上目標の達成状況や先月に決めた新しい取り組みの進捗状況、営業先の新規開拓について検討した記録が残されていた。


 発言者はほぼ自分であった。

 自分は昨日、体調不良で午後から早退しており、会議には参加していない。


 同じ会議に出席していた仲のいい同期にそれとなく話すと

「間違いなくお前が喋ってたぞ。あれ終わってから帰ったんじゃないの?」


 メールを確認すると、昨日送受信したメールが全て削除されていた。SNSのチャット履歴なども、同様に一昨日から今日に飛んでいる。


 携帯のカメラロールに、昨日の写真が一枚残されていた。自分は会議の後、使用したホワイトボードの写真を残すことにしている。


 夕暮れ時の明かりをつけていない会議室。

 出席者と思しき人影は酷くブレており人物が特定できないが、顔はこちらを向いている。


 会議内容が書かれたはずのホワイトボードは、一面真っ黒に塗りつぶされていた。











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