家の前で、ブラウニーを拾った
朝、雲見の山の上にある我が家の庭に出ますと、隣の家との間にある階段の途中で、黒っぽいシワシワで長髪の小鬼が何もない空間を叩いていましたの。
「まあ、ブラウニーですわ」
珍しいものがいますの。私、こういう生き物?妖怪?には、ちょっと詳しいので、直ぐ分かりましたの。へアレスのチャイニーズ・クレステッド・ドッグみたいで、かわいいのですの。
家の方を振り返ると、わが家の座敷童子の麗子が視線をそらしましたの。
「何してらっしゃるのかしら?」
麗子は、岸田劉〇の御息女の絵姿に似ているので、私が名付けましたの。コケシみたいでかわいいのですの。
「結界を解きなさい」
「……!」
「『同業者の匂がするから嫌』、ですか?」
「麗子を追い出したりしませんから、安心なさい」
童子は渋々結界を解きましたの。
「何か、御用かしら?」
「ギギ、ギギギ、ギー」
「グレムリンさんからの紹介ですか?」
「ギギギギ、ギギギ、ギ、ギ、ギーギギ、ギー」
「『最近、家事をしても対価のミルクとビスケットを貰えない。家中探しても見つからないから、きっと踏み倒されている』と?」
「ギ!」
「後払いが、いけないのではなくて?」
「ギギ!」
「『それが伝統!』ですか。それでは仕方ありませんね」
「ギギ、ギギギギーギー、ギーギー、ギー」
「『掃除については、家の床を動き回っている薄っぺらな機械と競合しているのも良くないのかもしれない』と?」
「ギーギー」
「『奴が憎い』ですの?」
「ギ!」
「壊しておしまいになれば、よろしいのに」
「ギーギーギー、ギギ!」
「『意味もなく、家財を傷つけることは出来ない』と。色々面倒くさい方ですわね」
「ギーギーギー!」
「『仕事に見合った対価が欲しい』と。当然ですわね。少し考えてみますので、あなたは……」
童子がすごい目つきで睨んでいますので、お隣の家へお泊りになってもらいましたの。
「ギーーギーー」
翌朝また隣の家との階段の途中で、小鬼が何もない空間を叩いてましたの。
「麗子……」
童子が、渋々結界を解きましたの。困ったものですね。そこがかわいいのですけど。
「さて、まず確認したいことがあります。貴方への対価とは食べ物そのものなのですか?」
「ギー、ギギギギー、ギギー」
「やはりそうでしたか。分かりました。それでは、現代の家事について学んでもらいましょう」
その日は、グレムリンの教育に使った
翌日は、木工道具を使って、実際に家と隣家の整理棚を作成させましたの。一石二鳥でしたの。
その翌日には、「金工細工」「ハンクラ」「モデラー」系の動画漬けにしましたの。
さらにその翌日からは、様々なキットと工具を与え、腕を磨かせましたの。指導は
ここ数日は、子供が壊してしまった◯ルバニアファミリーのホームがある家を夜の内に順に巡って、修理とリホームをやらせてみましたの。どの家でも、翌朝子供が大喜びでしたの。
「ギーギーギギ?」
「『対価を貰ってないが?』と、これはまだ修行です。不完全な仕事で対価を求めるのですか?」
「ギギ!!」
「お分かりになられたようで、重畳」
一ケ月が立ち、ブラウニーは一人前に成長しましたの。
「さて貴方、大抵の工作は名人級になりました」
「ギ!」
「世の中には、部屋の中に作りもしないプラモやガレキをため込んでいる人間がいます。大抵それらの部屋は片付いていません。家族も困っています」
「ギギ!」
「部屋を片付けてしまいなさい。また作りもしないキットは、場所ばかり取るゴミです。全部完成させておしまいなさい。箱も開いてスクラップブックにしてしまうのが良いでしょう」
「ギ!」
「そして後払い報酬に、完成品から持ち主の一番思いのこもったものを、強制徴収しなさい。部屋も片付き家族も喜ぶでしょう」
「ギ?」
「後払いのミルクとビスケットは、『満足と感謝の印』なのでしょう? どこが違うのですか?」
「!!!」
こうして私はブラウニーを送り出しました。
ネットでは最近、「親に部屋を勝手に片付けられた!」「いつの間にか部屋にコレクション棚が出来てた。ありがとう母ちゃん」「保存用のコレクションが、全部組み立てられて、塗装されジオラマになってた。誰がやったんだ(怒)」「親をマジで怒らせるとヤバい。ガレキが脱衣不可で完成させられてた(泣)」「俺の◯◯様がない(涙)」などの書込みを、頻繁に見かけるようになりましたの。
ブラウニーはお仕事に精を出しているようですの。報酬もちゃんと取っているようで良かったですの。
貴方の部屋、最近妙に片付いてまいせんか? コレクション大丈夫かしら?
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