締め忘れ
天蝶
第0話
ある晩、友人と一緒に飲んで帰宅したタカシは、酔っ払った勢いで鍵をかけるのを忘れたことに気づかなかった。家に入ると、すぐに寝室に向かい、そのまま寝てしまった。
翌朝、目を覚ますと、部屋の中にひどい静けさが漂っていた。ふと、何かの気配を感じたタカシは、冷や汗をかきながら周りを見回した。しかし、自分の部屋には誰もいなかった。おかしなことに気付いたのは、その時鍵がかかっていないことだった。いつもなら鍵をかけているはずなのに・・・。
恐る恐る家を出ると、目の前に見知らぬ靴があった。自分のものではないその靴に驚き、思わず後退った瞬間、背後で音がした。振り返ると、そこには薄暗い廊下に立つ影が。
「ほんとうに不安だったよ。君が鍵をかけないなんて思わなかったから。」
影の正体は、タカシの友人だった。彼は心配になってタカシの家を訪れたが、驚いたことに、タカシの部屋が散らかっているのを見て、自分の考えをすぐには信じられなかったと言った。
しかし、次の瞬間、タカシは彼の言葉に怖さを感じた。どうして友人が部屋の中を知っているのか? 彼は自分の部屋に入るはずがないのだ。
その時、タカシは思い出した。彼が眠る前に、自分とは違う人が部屋に入ってきたことに。そして思い出したのは、友人が言った言葉の最後の部分。「君が鍵をかけないなんて思わなかったから。」その心配は、友人へのものであるはずの言葉だった。
タカシの視線がゆっくりと友人から離れ、廊下の奥を見つめる。影の背後に続く暗い廊下には、彼が見てはいけない何かが lurking 姿を隠していた。
その瞬間、自分が本当に恐れていたのは、友人ではなく、自分の家の中に既に入っていた何者かだった。鍵の締め忘れは、思わぬ恐怖を呼び込む原因になり得るのだ。
締め忘れ 天蝶 @tenchoo
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